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「ほら僕が選んであげたんだから
ちゃんと着てくれないと困るよ」

「お前は俺の母ちゃんか」

「単位大丈夫なの?」
「まあまあってかんじ」

「まあまあって何」
「そのまんまだっつーの わかれよ」
「僕は取れるのか取れないかで
聞いてるんだけど」

「だから このまま行けば取れるけど
まだわかんねえって つってんの」

「はじめからそう言えばいいんだよ」


俺は何度だって言うぞ お前は俺の母ちゃんか 二年の後期 出なければいけない講義は多いものの稀に昼からある日などもある 今日は全くもってそんな日ではなく1限から5限まで詰め込んだ所謂フルコマの日で 朝からずっと大学にいるならかっこよくきめたいよね!とか言って服をあれこれ選び 着重ねさせる俺の母ちゃん 、燭台。普段家では着物 外でもシンプルなものを好む俺にはいかせん面倒でならん

「靴はこれだよ あれは駄目」
「履きやすいからあれがいい」

「かっこよくないから駄目」
「何時間も大学にいるんだから 動きやす」
「ぬしさま 良き朝にございますよ」

玄関に立ち竦み小さい言い合いをしていた俺と燭台 だが言葉を遮られたかと思えばそれと同時に背後に重みを感じた

「おはよう小狐丸」
「はいぬしさま おはようございます」

挨拶をするとさらに俺に体重をかけ後ろから首に腕を回しすり寄ってきた。

「どうした? 」

いつもは学校に行く邪魔をしない小狐丸に珍しく思い耳のあたりに手を伸ばし そっと撫でてみる

「ふふ ぬしさまぬしさま」

含み笑いをしたかと思うと今度は手にすり寄ってきた どうしたものかと悩み燭台に目配せをしてみた。燭台もすこし困ったような びっくりしたような顔をしていた なんだお前もこいつが甘えてくる理由知らないのか。ううむ困った 単位を取るには足りている出席日数ではあるがフルコマである今日を休んでしまっては5つもの講義を欠席してしまう それはさすがに避けたい。まあ途中で大学に行けばいいのだがこの甘えぶりは多分俺、1日解放されない。


「小狐丸 お前も学校くる?」

「は?」

そうだ、小狐丸と一日中いることになるのは明確だ ならば一緒に学校に行けばいい 大学の講義なんて学生以外が受けたってバレたりしないそれに今日は好都合、大人数での講義ばかりだ ゼミもないしそれならばもしもの可能性も含めてバレる不安も追い出される心配だってない。燭台が鳩が豆鉄砲食らったような顔で俺を見ているがそんなの知らぬ存ぜぬだ

「誠にございますかぬしさまっ
この小狐 ぬしさまのがっこうとやらに行きとうございますっ」

キラキラした目で俺を見てくる小狐丸 おおやった いい食いつきだ これなら俺大学行ける 欠席にならなくて済むぞ

「うんうん いいよ 今回だけだからなー
とりあえずお前くらいなら俺の服着れるだろうし その髪は帽子で隠せばなんとかなる 俺車の準備してくるから 小狐丸は燭台に服選んでもらって着替えて」

後ろから抱きついていた小狐丸を優しく離し 一度頭を撫でてから 燭台をチラ見した。仕方ないといった顔をしていたので、これは任せていいな。とりあえず小狐丸を燭台に任せて車庫に向かうことにした。

「はいぬしさまっ
準備をして参ります!」









「ガソリンこれだけあればたぶん保つよな 最悪帰りに入れて帰ればいいし」

車で大学なんていつぶりだろうか いつもバイクか交通機関で行ってるせいで あまり乗ってないようにも思えた。遠出をするときはよく運転するんだけどなぁ

「あ そういえばあいつらには言わないようにって小狐丸に伝えるの忘れてた」
「あいつらって誰のことかな 雅人くん」

「げっ」

運転席に座っていた俺はふと声がしたと思いミラーを確認すると満面の笑みで後部座席に座っているあの赤と青がいた。

「俺達には大学行きたいって言ってもダメだの一点張りのくせに あいつはいいってどういうこと」
「だってお前らどう見ても大学生っていうには若いし 何より誰彼構わず睨み散らすから」

「そりゃあ 雅人くん僕たちの主だし 何かあったら困るじゃないか」
「大学はそんな物騒じゃない
この前だってちょっと近くのスーパー行っただけで ボディーガードかってくらい辺りに警戒して殺気立たせてさー 近所の人に悪い噂広まるからやめろよほんとに」

ミラー越しに続く会話 バツが悪いのか黙り込む二人。

「、今度 お前らもどっか連れてってやるからさ それで勘弁してくれよ」

ハンドルに寄りかかりながらミラーで後ろを伺ってみると黙り込んでいた二人は目をキラキラと輝かせていた。

「約束だからね主っ」
「破ったら雅人くんとは口聞いてあげないから」

「はいはい わかったよ
ちゃんと覚えておくか あ、てかお前ら今日内番じゃなかったか?」

よく見たらいつもの服装ではなく内番用の服を着ていた二人。確か今日は畑当番頼んでたよな まさかこいつら、

「げっ バレた」
「いやだって ネイルが…」

舌打ちをする安定に自分の手を見つめながらボソボソとつぶやく清光

「働かない奴を連れて行く気はないぞ」

くるりと後ろを向き二人に言う。

「働けばいいんだろ働けばっ」
「ネイルは塗りなおせばいいっ」

「そーそー がんばれ二人ともー
帰ってきたら構ってやるからさ」




コンコンッ

「雅人くん 準備できたよ」

運転席の窓を控えめにノックし 小狐丸の準備が終わったことを知らせる燭台。 それと同時に安定と清光が車から降りて畑の方へ向かっていた。

「ん ありがと」
「ぬしさま お待たせいたしました」

「そんなに待ってないからいいよ
じゃあ 隣乗って もう出ないと講義間に合わねーから」

にっこり笑って言うと小狐丸は嬉しそうに助手席に回り込み座った。心配そうに見つめていた燭台に 大丈夫だから という意図も込めて手を振った。さて、大学までちょっと急いで行こうか。





(運転するお姿は見目麗しいですな!)
(お前口は本当達者なのな)




20150728*



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