小話 | ナノ




うた恋い。



『百人一首か』

「ああ どうだ」

『定家の選ぶ和歌は嫌いじゃない』

「俺の和歌はどうだった?」

『あー うーん』

「嫌いなのか」

『いや 違うんだ
お前は才能もあるし むしろ好きだ
ただな、』

「なんだ はっきり言えっ」

『この和歌は お前が 定家が俺ではない誰かに送った恋文だ それが悔しいんだよ ただ
嫉妬してるだけなんだよ』

「ほんとお前ってストレートだよな」

『そうか ありがとう』

「ほめてない」

『例えで恋を語るのは苦手なんだ』

「それでどうやって恋文書くんだよ」

『定家にしか書くつもりはないから大丈夫だよ お前鈍いし』

「鈍くない お前よりマシだ」





(お前に宛てた和歌なんてごまんとある)
(ただ 誰にもお前への恋文を読まれたくないだけだ)


「鈍すぎだバーカ」




20120713*



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