「目、覚めた?」

「?!」


勇義が起きるとそこにはドアップな加賀屋がいた。

知らない場所だ。

ここは?

加賀屋が覗き込むのをやめ、あたりをキョロキョロと見回すと自分はキングサイズのベッドの上だと知る。

「勇義、お前声はどうした?あの時は喋れてたよな?」

「!!」

ぱくぱくと口を動かす勇義は両手を広げて加賀屋を見た。

「まぁそれは追々として。よくもまぁ、俺の前で飛び込んでくれたな?普通の人間だったらトラウマだったぞ。」

そう呟いてから、勇義の手を取って起き上がらせる。まだ、強請るようなので引っ張って膝に乗せた。


「メモ帳に数字が書いてあった。あれは、俺が提案したやつだろ?俺が取消出来ないわけがない」

ぐりぐりと、加賀屋の胸に顔を押し付けた。

「勇義は死にたいの?」


ギュッと加賀屋のスーツを掴んで、動きを止めた。



「ふーん。


俺に会いに来たんじゃねーの」


加賀屋はつまらなそうに勇義の髪をすくと、勇義の顔を上げさせた。


「声出せ勇義。お前はどうしてーの?」



何度も、何度も加賀屋は繰り返し聞く。


「、、、」


ゆぎにはもう死ぬ事しか、それしかできない。もうそれもできない。加賀屋に会ってしまった。



勇義の、

勇義の、

「ゅぎ、の、しゅぅにぃ。」

勇義の瞳が膜を張りぽろりと涙が溢れ出す。
ゆっくりとした声。まだ、赤子のようなそれに加賀屋は、満足そうに頷いた。

「しゅ、にっ」

「何?」

お金もごはんももう勇義にはない。
加賀屋にしてあげられることなんてもうありはしないのだ。

「たまご、なぃ。ゅぎ、おかねもなぃ。」

おにぎりも作ってあげられないのよ。

泣きながら勇義はふふっと笑う。
加賀屋はびっくりしたように目を見開いて、数秒後ククッっと笑ったかと思えば

「─出来るぜ」

と、軽く言ったのだ。


「?」

こてん。

「そんな事なら、

俺の側で作ってろ。一生、そうしてれば良い。」

「で、で、も。」

「俺が稼いで、米も卵も、なんだって俺が用意する。材料はすでに揃ってる。
俺にこんなにやらせといて、お前は一体何をする?何しか出来ないんだ?」


「し、しゅうにいの…ごはん、作る」


ククッと笑う声がする。



「あぁ。それがお似合いだ」









 


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