アナタが世界でボクが色。 | ナノ


○○発見しました。



門を背に、真っ直ぐ歩けば行ける気がすると思った。

そう思って、歩き続ける事数十分。いや小一時間?時間の間隔なんてそこら辺に置いて来てしまった。途中で拾った良い感じの木の棒を杖代わりに、更によたよたと歩いて歩いて。

はわー…
全く着く様子がないよ。
オレ真っ直ぐ歩いてるのに。
何でなの。


まだまだ続きそうな道のりを思って重くため息を吐く。続くのは若干の後悔…。

やっぱり
車乗せてって貰えば良かったのかなぁっ?
でも、オレついて行っちゃったら迷惑そうだったし、勝手に来たのは自分だし…。

そう考えてうーうー唸りながら進んでいくと
突然、視界が開けた。
獣道のような木々の隙間を歩いて来たからか、何故か駆け出したくなった。でも現実はそんなに甘くないのである。疲労はすでに振り切っているので、視線をきょろきょろするだけで終わった。疲れで視界がまたぼやける。
そんなに広くないその場所。

そして、右奥で直ぐに目に入った塊。



塊?



いやいやそんな、塊なんてきっとただの自然が生み出したものとか不法投棄。とか思いながら何も考えず引き寄せられるように目を細めて近づいた。
ぇと、

人。
多分人。

多分ではなく、人である。


眼前には横たわった人間がいた。
立ち上がったらきっと高いその方は、両手を頭に敷いて目を固く閉ざしている。
寝ていらっしゃる?
しかしながら、オレがほぼ真横でずっと立って見ていても全く反応がない。
流君だったら絶対この開けた場所に足を踏み入れる前に寝ていたとしても起きているし、

爆睡ですかねっ?いやでも

い、行き倒れ…じゃないよね…?
いやいや!
オレじゃないんだからそんなそんなっ

全く失礼な事を考え、
ちょっと心配になったのでそろりと近寄り、その人の横にぺたりと座ってみる事にした。

じっと覗き込んでみると、その人はいわゆる強面な美形さん。
目鼻筋がはっきりしていてすごく整ってる顔。ちょっと怖そうな感じもするけど。
茶髪の髪も手入れの行き届いた良質なものだと分かるし、ワックスで整えられた髪はなんか流行っぽい気がする。強そうで格好いい感じの人。

いやいやでも
流君の方がかっこいいよ!
手入れとかワックスとか絶対しないけど!


一度頭を軽く振ってもう一度覗いてみる。







―――じっ








ん?あれ。
なんだろこの違和感。







「…………」







流君にもワックス、似合いそう…
いやいや!違くて!








――――じっ








目を固く閉ざしている。







全く動かない。











――――じっ












「…しんでる」



だって息してないよこの人。











し、し、し死体発見しました流君!

こんな綺麗な死体って初めて見ました!

…………。
ど、どうしよう。
どうすべきなのっ?何が正解なのっ?



深呼吸。深呼吸。深呼吸。






落ち着いた所でもう一度、



……ちらり。



現状把握。現状把握。










「……死んで「あ?」」








え。








「誰」

ぼそりと低くかすれた声。

それは間違いなく、
目の前の死体だったものからだ。


「………」


綺麗な黒の瞳とガチリと合う。


「……何、お前」


眉間のシワが更に深くなって、さっと目を逸らして泳がせる。

間違えました。
生きてました。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。


「ハッ…す!みま、せん。死体かと!思いましたっ。…ぁの!もしかして、行き倒れてるんです…かっ?」



ここは正直に。

「お水!もってませんよっ」

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