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キラキラの人が恍惚とした表情で笑うと満足そうに頷いた綾瀬君は思い出したかのようにクルッとこっちに顔を向けて大きく腕を開く。
「んじゃ伊呂波も一緒に行こうぜ!俺話したい事いっぱいあんだ!」
そう無邪気に笑った綾瀬君。
森にヒトキワ響くその声は、まるで彼がこの世界の主人公のように反響している。そしてそれを歓迎するかのように揺れる木々の隙間から射す日光は、綾瀬君を更にステージ上へと誘っているかのようだ。
「なぁってば!」
「…あ、えと」
ぼけーっと綾瀬君を見ながらそんな事を考えていると、急に話を振られたことに目をパチパチと瞬かせる。
そして今更ながらなぜ森にいるのか、なんて
自分が元々迷子だった事が頭に浮かんだ。
でも確か昨日地図見た時、理事長室は教室のある棟とかなり距離があった気がした。気がする。多分。
…うーん。
回り道になっちゃうかも。
それに、なんかこの二人の間に居るのはちょっと怖い気もして。
少し考えて「迷惑になりそうなので大丈夫です」って言おうとおずおず口を開こうとすると、
「光、彼はここに用事があるんですよ。それじゃなきゃこんな所まで来る訳がありません。そんなことより光、理事長がお待ちですから先に行きましょう?皆も光の事心配してずっと、ずっと探して居たんですよ」
開いた口を引き結ぶ。
キラキラの人がチラリとオレを見て言葉を遮ったからだ。
「そっか!叔父さんとも久しぶりに会えるなぁー!楽しみ!お前らは本当に俺が居ないとダメだなぁ。あはは!」
そうこう考える内に、綾瀬君も¨理事長¨の言葉に反応したようで、キラキラの人の手を引っ張って歩き始めた。最初の方は何かよそよそしかったのに、今は全くそれは感じられない。二人の反応を見るに、知り合いだったらしい。
何か色々言ってたけどよくわからない。
まぁどうでもいいか。
うん。
「伊呂波!俺、急いでっからまたなっ!」
「あ、はいっ」
最後に、大きく手を振ってきたので軽く会釈を返す。小さくぼやけて行く二人を眺めながら若干ホッと胸をなで下ろした。
うむ。
さて、オレも帰ろう。
一つ頷いて、ゆっくりと立つ。座っていた甲斐があり、足の疲れが少し引いていた。
これなら歩ける、そう思って一歩右足を前に進めた。
「……」
地面を踏みしめると途端に電流が走ったような鈍い痛みが足首を巡った。
目線を下にして、足首をじっと見た。ジンジンと痛みが増してるように思える。
足があつい。
きっと、赤くなってる…。見たらもっと痛くなりそうだから見ないけどっ!
「……」
…まぁ、大丈夫。
折れてないし!
若干の不安はあったが、一瞬¨野宿¨という言葉が浮かんで頭を振った。
まだサバイバルの仕方も覚えてないのに野宿なんて出来ないしね!うん。よし。
検討違いな事を考えて1人頷いてからもう一度門を見上げた。
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