アナタが世界でボクが色。 | ナノ


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時の流れなんて忘れるくらいの青い空と、ゆっくりと流れる雲をじっと見上げた。
オレの瞳では、若干ぼやけて見えるけどたぶんこの学園に来た時と同じ空模様をしている。

あれから2ヶ月にもなるのかぁ…。

そこに、影がさした。
ブンブン肩を揺らされる。

「なぁ!なぁって!聞いてんのかよ?!」


「え?…─わっ!?」


ぼーっと眺めていたらはっきりした響く声が降ってきて、視界にモサモサな黒い物体が目に入った。

驚きで肩が跳ね、とっさに目線を彷徨わせる。顔近い…。

…そう言えば、この子と喋ってたんだっけ。


「ご、ごめんなさい。…聞いてなかった…です」


いけないいけない!
いつもの癖で考え事してた。完全に失礼だったかもだっ。申し訳ないです。


「人と話す時は、目を見て話すんだぞっ?!」


「あ、う。そうですねっ。が、頑張りぁす!…ます!」


こんなに同い年?の人と話すの初めてかも、と思ったらやっぱり頑張んなきゃと思ってきた。


「だーかーら!お前の名前だって!教えてくれよ!」


見た目の大人しそうなとことは裏腹に、はきはきとした明るい口調で聞いて来た。
もちろん、名前を言わないのは失礼だから


「ひゅ…違くて、藍川 伊呂波…です」


「伊呂波な!俺、綾瀬 光ってのっ。よろしくな?」


「…は、はい」


あ、今度はちゃんと綾瀬君の目、見れた気がする…かも。
そんな事を思ってる時
突然右の方の茂みからガザッと草の擦れる音がして、とっさに綾瀬君の服の裾を掴む。と、それに気がついた綾瀬君が怪訝そうにしたので慌てて謝った。


「そこに誰かいるんですか?」


やけに丁寧で品格を漂わせた声が聞こえた。
茂みから出てきたのは
多分、生徒。
顔が見える位まで、近寄ってくる。結構背が高い。まつげ長い。すごい。
太陽の反射で髪がキラキラして綺麗だ。


「……あなた」


「…?」


声に誘われてチラリと視線をむけると驚いたように目を見開いていた。

な、なんだろう…この人。
視線がこっちに向けられてるような…
ちょっと不安に思っていると横に居た綾瀬君が、素早く声を張った。


「おい!あんたが迎えの…て、お前っ」


「はい?」


「あ、あーいや!何でもねぇーし!」


「……。探しましたよ?さぁ、向こうに車を待たせてあるので行きましょう」


そう言った少し怪訝そうなその人は、にっこりと笑って綾瀬君に手をさしのべた。

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