アナタが世界でボクが色。 | ナノ


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そういえば─…


"日向"って出すのは危ないから偽名使うんだった。
流君が相良で
オレが、藍川。従兄弟って設定なんだって。

そう何となく思い出したのがエレベーターの中。押しボタン式のランプが9のボタンで光っている。
エレベーターの中は、車二代分くらいの広さだ。最初も思ったけど、エレベーターに人住めるよね。2回目だから驚かないけどー。


「………。」


と言うかねっ、そんな事より衝撃的な事実なのですよ!
オレ、ずっと流君の胸に顔を押しつけられたまま抱えられています。
まだここに来て一回も地に足を着けていません。
そして更には、
まだ一回も学園の人と顔をちゃんと合わせてません。
…凄いね。さすが流君!


「降ろして下さいお願いします……降ろしてー…」


これ何回言ったんだろ…


「却下」


うぅ…
これも何回聞いたことか…
で、でも負けないからね!


「でもさっ!これから教科書取りに行くんでしょ?あとちょっとだし歩けるよ!」


と言うか、職員室?にこの状態で入りたくないよ…(今更)
廊下でだって驚かれてたしさぁ。みんな引いてたしさぁ。恥ずかしかった…。
そう訴えると視線を携帯画面のままに、


「邪魔にしかならねぇんだよ」


と、無表情で一言。



……………………。



ガ━━━━ン



か、かなりショックっ
そんなに、じゃま…だったのオレ…っ?た、確かに足遅いけど、…良く転びそうになるけど!人に当たりそうになるけどねっ

邪魔って言われる程じゃないと─……あれ

邪魔の何ものでもないような……
そ、それにしたってさっ
そんなにはっきり言わなくても…。流君だからしょうがないけど…



そして、丁度よくチーンと金属音が鳴ってエレベーターの扉が開く。
流君はショック状態のオレを全く気にもとめる事無く廊下へと出ると、数十メートルくらい歩いて一つの部屋に入った。
部屋の奥へと進むと、そこは真っ暗。辺りをキョロキョロと見回して、こてんと首を傾げる。


「…あれ?職員s─」


そう言い終わらない内に
突然の浮遊感に襲われて、ボスンッと弾力のある所に投げ捨てられた。
それはもう言葉の通り投げ捨てられた。


「うぇ!?な、何?…えっ…ちょっと待って?!」


混乱しながらズレた眼鏡を直して見上げると、パチンと音と共に周囲が明るく成っていた。


「………へ?」


でも、そこにはもう流君の姿はなかったのでした。
という事はだ…
置いてけ…ぼり…?


「もーっ!流君のばか!」

最初っから置いてくつもりだったんだーっ!
邪魔とは言われたけどっ
置いて行くことないじゃんさぁ
ちゃんと大人しくできるのにー…

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