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◇◇◇
カチカチ…───
無機質な聞き慣れた音につられてゆっくりと目を開けた。頭がぼーっとする。
…―何の夢、見てたんだっけ
そろりと目線を動かすと、最初に目に入ったものは見慣れた腕。少しの煙草の臭いとオレが一番安心出来る匂い。
ふふ…
なんか、ほっとする…。
流君の癒し効果。
今日一日で色々あって疲れたのかも…もう一回寝たいなぁ…。
そんな甘い誘惑に耐えつつ、何となく目線を横に向ける。
そこには
ピカピカに磨かれた、
ガラス…?
「─……っ!?」
ビクッと体が跳ねた。
横の窓には、今の状態そして周りの背景がうっすらと写しだされていたから。
強制的につくられたシーンと静まり返った"教室" とこちらに向く沢山の顔たち。
ひっ…久し振りに
こんなに人見たっ。た、たぶん理事長さんとの話が終わって直接クラスに来たって事、だよねっ?
…いや、でも
「…りゅ、流君」
こそこそと小声で呼んで、顔を上げると携帯を片手に視線だけを合わせてくれた。
因みに、カチカチと携帯を操作する手は止めていない。
…相変わらず凄い……けど!今そんな事関係なかったっ
「あ、あのさぁ。なんで流君と一緒のクラス…なの?」
当日から教室来ていいの?とか何で来る前に起こしてくれなかったの?(たぶん面倒くさかったからだと思うけど…)とか
色々聞きたいことはあったけど、一番気になってた事をこっそりと聞く。
だってどう考えてもおかしいよね?流君とオレは二歳差なんだし。
それに、何故か一緒の机?
今の状態も流君の膝の上に跨ってる格好なわけで…
日向さんの話しなら
別々じゃなかったっけ。
あれれ…?
オレが首を傾けて悩んでいると流君が先に口を開いた。
「くだらねぇ事聞くな」
…はわ?
「くだらない事なの?」
ん〜………。
まぁ、いいか。…うん。
良いのかわからないけど、深く考えないようにしようと思った時、キーンコーンと鐘の音が響いて、
「…じゃあHRを終わりにしますね。えっと、」
いつの間にか前に立っていた優しそうな人が柔らかい声でこの静寂を打ち切った。
あの人が"先生"というやつなのだろう。
白衣を着た大人しそうな人だ。
他の生徒達がコッチをチラチラと伺いながらそそくさと教室を出て行く中、その人がオレ達の方へ向かって言った。
「相良君の教科書が職員室に届いてるから取りに行って下さいね。多分藍川君のもあるはずですよ」
…ふむ。
とりあえずわかった事は、
一番前の窓側
そこが流君の席でした。
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