7
◇◇◇
暗闇の中
冷たい地面にぺたりと座っていた。
何も見えない。
見えない。
見えない。
自分さえも見えない。
目の前に手をかざしているのに、そこにはない。
それが普通で、怖さなんか感じた事はない。
『大好きよ』
何もない空間から、突然声が降ってきた。掠れた可愛いらしい声。それは何処かで聞いたことのある声。
『愛しているわ』
そして、
その呟かれる言葉。
『他には何もいらないもの。本当よ?』
うん。
『あなただけが、』
──知ってるよ
『大切なの』
全部知ってるから
『大切過ぎて、誰にも見られたくないから』
──愛しい言葉
『あなたを外には出したくないのよ』
――欲しい言葉
『愛してる』
──その震える手と冷たい瞳
そう
全部知ってる。
その瞳には、映っていないのも、──………
唯一
愛したかったと思った人。
prev next