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それにしても広い……。
あれから、かれこれ30分はたったはずなのに建物の片鱗すら見えてこない。
窓の外は、一向に変わらない景色が続いていた。
1つあくびをしたあと、ちょっとお願いして抱っこの体制にして貰っていたオレは、大人しく窓の外を眺める事にした。
「………森。」
門の外も相当だったけど。
山奥にある学校だから野生的なんだね。きっとサバイバルごっことかやってるのかも…。ちょっと面白そう。
確か、サバイバルには最初に火と水の確保が重要って書いてあったなぁ…
水は、川とかで何とかなるけど火ってどうやって起こすんだろ?最低マッチ棒ないと無理じゃないなぁ…
今度調べて見よう。うん。
一通り考えるのに満足してまた緑の木々を見渡した。
…それにしても、すごい緑。
どこ見ても緑色一色。
目にはすごく良いんだろうなぁ。なんか見てるだけで視力が良くなりそうだ。
因みに言うと、オレの視力は頗る悪かったりする。眼鏡を掛けてもほんとに若干だけどぼやけてしまうし。
一応、眼鏡も特注品らしんだけどそれが限界なんだって。
原因っていうのは、生まれつきのもので眼鏡が無いと光の強弱位しかわからないから普段の生活も結構難しい。
手術をするとしても、失明しちゃう可能性が大きいんだって。
産まれた時、直ぐに手術出来れば可能性はあったらしいんだけど、まぁしょうがないよね。
………――でも
何となく、ちらりと流君の方を覗くと流君もオレの事を見ていたらしく目が合った。
──でも、
失明だけは……
見えなくなるのだけは
絶対になりたくない
って、強く思えるように成ったのも流君と出逢えたからだと思う。
オレってすっごく依存してるなぁとは思うけど、もうどうする事も出来ないんじゃないかな、とかね。
「どーしたの?」
目が合った流君に、へにゃっと微笑んで少し首を傾げると、ゆっくり腕がのびて来て、
「…あぅ」
ほっぺたを強く引っ張られた。
…結構痛い。
流君、力強すぎるよぉ。
「い、いひゃいよ…ひゅーくん…」
ふと、痛みで見上げると無表情で未だに引っ張る流君。
けど…。
暗くなった思考を浮上させてくれるのは、やっぱり流君で。些細な行動、それだけでオレの心は暖かくなるのを感じる。
オレは、もう一度
へにゃっと笑った。
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