夢小説 完結 | ナノ
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29 作戦会議


「それで逃げられちゃったのー?」

「…おう」

「まさか防犯ブザーを鳴らされると思ってなくてね」


苦笑いを溢した氷室さんに「そうですか、」と返すと、隣で紫原が不機嫌そうに「もう、」と声をあげた。


「見つけたとしても、苗字から逃げられてもうたら埒があかんなあ」

「そうですね…けど、陽泉がこっちに居れるのも今日と明日までですし、やれる事はすぐにでもやった方がいいと思います」

「…せやな」


隣に座る今吉さん笑って返してくると先ほど頼んでいたコーヒーを口に運んだ。
小さな喫茶店には不釣り合いな俺たちがここに集まっているのはもちろん苗字さんのためだ。


「それにしても、桃井から聞いたときは驚いたよ。
紫原も彼女と知り合いとはね」

「…俺も黒ちんや赤ちんも知り合いとは思わなかったしー」


どこか拗ねているように紫原が言うのは、恐らく、彼女への独占欲からくるものなのだろう。
全く何人惹き付けているのだろう、と小さく笑っているとカランカランと鳴った喫茶店の扉。


「こんにちは、赤司くん」

「やあ、久しぶりだね黒子、あと火神だったね。桃井と青峰には先週あったね」

「なんや、自分ら仲よう一緒にきたん?」

「いえ、たまたまそこで会って…」

「黒ちんだ〜久しぶり〜」

「…紫原くんも居るとは思いませんでした。お久しぶりです」


「久しぶり」と返す紫原は黒子の頭に手を伸ばしたけれど、それを避けた黒子は入ったときからずっと続いている、火神と青峰の喧嘩をとめた。


「…で?俺までこんなとこに呼び出してなんのつもりだ?赤司」

「おや?青峰だって彼女を探したいんだろ?」

「お前には何か考えがあんのかよ?」


火神の言葉そその場にいる全員の視線がこちらに向いた。
周りを見回してから、ふっと笑みを溢すと玲央が心配そうに「征ちゃん?」と呼んだ。


「ないな」

「「はあ!?」」


「んだよ!それ!?」「赤司、てめえふざけてんのか!?」と声をあげるパワーフォワード達を諌める桃井と黒子。
その様子を見ながら、再びコーヒーを口に運ぶと悪くない味が口のなかに広がった。


「…赤司、ほんまに何も考えとらんのかいな?」

「はい。何も」

「でも…じゃあ、いったいどうして私達をここに呼んだの?赤司くん」

「…さあね。とにかく、俺は出来る限りの人を集めたいんだよ。桃色、他に彼女と面識があるのは誰だい?」

「え?えーっと…きーちゃんもだよ?あ、あと…きーちゃんの話によると、ミドリンもって…」

「はっはっは!苗字さん、いつの間にかキセキコンプリートしとるやん!」


「ホンマ凄いなあ」と笑う今吉さんは眼鏡の奥で更に目を光らせた。
恐らく彼には“目的”はバレてしまっているだろう。
それでもここに残ってくれて居るとという事は、付き合ってくれるつもりだろう。


「…それなら、黄瀬と緑間にも声をかけよう」

「赤司、お前本当に何を…」

「ま、ええやん。人海戦術も作戦の1つやん。一人より二人、二人より三人…せやろ?」


納得できないような顔をする福井さんに首を傾げてみせた今吉さん。
それに渋々といったように福井さんが引いてから、何かを思い出したように氷室さんが「そういえば、」と声をあげた。


「俺たちの他にも彼女を探していた人達がいたけど?」

「なっ!?タツヤ!?お前もいたのかよ!?」

「タイガ、今頃気づいたのか?」


店に入ってから大分経ったといったのに、氷室さんの存在に今頃気づいた火神に呆れたような顔をした氷室さんに「それで?」と続きを促すと、「ああ、」と視線を火神からまたこちらに戻した。


「…俺には誰かは分からないけれど…」

「…いや、まてよ…アイツは確か…無冠の…花宮のとこの奴じゃねえか?」

「…霧崎第一やな」


ニヤリと笑みを深めた今吉さんは「やっぱりなあ」と小さく溢した。


「ほんなら、苗字さんが捕まるんも時間の問題やろ」

「はあ?なんでそうなるんだよ?…デスカ?」

「…とにかく、こちらは人数を集めようか」


「それが第一だ」と言って残っていたコーヒーを全て飲み干してから席を立つと、「せやな」と笑った今吉さんも同じようにした。

「はあ!?こんなとこまで呼び出して、そんだけかよ!?」と苛ついたように声をあげた青峰に苦笑いをこぼしてから、マスターに礼を言って店を出る。

広がった青空に目を細めてから、携帯を開いて時間を確認する。
時間を確認しようと携帯を開けば、待ち受けにしてある彼女といつかに撮ったプリクラが現れる。

さて、この笑顔を取り戻しに行こうか。

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