夢小説 完結 | ナノ
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28 原と氷室と福井の捕獲


会いたくない、会いたくない、会っちゃいけない。

何度も何度も頭のなかで自分に言い聞かせて、助けてと、会いたいと言って伸ばしそうになる手を必死で押さえる。


『(ダメなんだよね…)』


私は、一人で生きなきゃダメだから。

ぼんやりとあてもなく進める足はいったいどこへ向かっているのだろう。
もういっそのこと、私はこの世から消えたほうがいいのかな。

視線の先に見えた赤信号。
それでも足を止めずに進んで、車が行き交う歩道を渡ろうとしたとき、


「みーっけ」

『!?』


知らない声と共に後ろから掴まれた肩。
はっと後ろを振り返ると、見たことのない金髪の目が前髪で隠れている人がニヤリと口のはしをあげた。


「あんたが死のうが俺には関係ないけど、それだと花宮に殺されんだよねー」


“花宮”そう聞いて思い浮かぶ人は一人しかいない。
慌てて金髪さんの手を払って走ろう足を動かすと、今度は誰かにぶつかってしまった。


『っ!』

「捕まえた」


柔らかなその声は何度か聞いたことがある。
優しい笑みを浮かべて視線を合わせてきたその人は優しく、でもどこか強く私の腕を掴む。


『(氷室さん…?)』

「離すなよ、氷室」

「…もう、逃がさないよ苗字さん」


氷室さんの隣には福井さんも居て、秋田にいるはずの二人に驚いて固まっていると、「ちょい待ち」とさっきの金髪さんが話しかけてきた。


「横取りってどうよ?その子先に見つけたの俺なんだけど?」

「逃がしたのもお前だろ?」

「細かいことはいいの。
とにかく、その子俺にくんない?じゃなきゃ俺殺されんだよねー」


一歩、金髪さんが近づいてくると、私を捕らえたままの氷室さんは下がって福井さんが前にでる。
険悪な雰囲気が流れる中、自分もなんとか頭を働かす。
どうしたら、この人たちから逃げれるだろう。

捕まっていない腕でポケットから電源の入っていない携帯を取り出す。
「苗字さん?」と心配そうに声をかけてくる氷室さんには悪いけれど、私は、


『(独りじゃなきゃ、ダメだから)』


キュッと唇を結んで、携帯から下がっている紐をひくも、同時に流れる大きな音。
ギョッと目を見開く氷室さんと福井さんと「あり?防犯ブザー?」とのんびりとした様子の金髪さん。

ザワザワと回りの視線が集まってきた所で、驚いている氷室さんから腕を振り払うと、「あっ!」と声をあげた氷室さんはまた手を伸ばしてきたけれど、それもなんとかすり抜けて集まってきた人を避けながら走る。


『(ごめんなさい、)』


ギョッと右手で胸の辺りの服を掴むと、ドキドキとなる心臓の音を直に感じる。
私は生きてる。生きてる、でも…独りじゃなきゃ生きちゃダメ。

後ろから聞こえる福井さんの叫び声に振り向きそうになる体をなんとか押さえつけて足を動かす。

お願いだから、誰も私にかまわないで。
私は誰も傷つけたくはないのだから。

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