22 黒子の不安
最近、苗字さんと連絡がつかなくなってしまった。
最初は彼女も忙しいのだろうと、あまり気にしていなかったけれど、いつもない1日もしないうちに返ってくるメールの返信が1週間しても返って来ないのだ。
「…火神くん、最近苗字さんと連絡をとりましたか?」
「いやそれがアイツ全然返事よこさねぇんだよ…って、じゃあお前も?」
部活終わりに火神くんに尋ねてみると、返ってきた答えに余計に心配になった。
もしかしたら、何かあったのかもしれない。
一度そう考えると不安が拭えなくて、自分でも分かるくらい顔をしかめて携帯を取り出した。
「黒子?」
「桃井さんにかけます。こういうとき、頼りになりますから」
「なるほどな」と頷く火神くんを横目に携帯のロックを外そうとすると、ピロリーンとメール受信の音がした。
もしかしたらとはっとしてメールを開くと、送り主は今電話をかけようとしていた人物だった。
「苗字か!?」
「いえ、桃井さんです。部活が終わったら連絡してとあります」
「そうか、」と今度はあからさまに肩を落とす火神くんを横目に電話をかけると、ワンコール鳴らした所でつながった。
「あ!テツくん??」
「はい、ちょうど僕も桃井さんに用事あったんです」
「あ、待ってテツくん!それよりも聞いて欲しいの!!
…最近、名前ちゃんと連絡がとれなくなって…調べたら学校にも行ってないみたいで…」
「っ!学校にも、ですか?」
「うん、もしかしたらテツくんやカガミンなら知ってるかなって想ったんだけど…」
「…すみません、実は僕もそのことで桃井さんに連絡しようとしていて、」
「そっか、」と電話越しでも分かるほど落ち込んでいる彼女の声に「本当にすみません、」ともう一度謝ると、慌てたような声が返ってきた。
「ううん!あたしの方こそごめんね、何も教えてあげられなくて…」
「…青峰くんも凄く心配してるんだ」と小さく呟いた桃井さん。
普段なら考えられないほど落ち込んでいる声に多分自分も彼女と変わらないくらい沈んだ声をしているのだろう、と小さく息をはいた。
「そうですか、青峰くんも…もし何か分かったらまた連絡します」
「うん、あたしもするね」
「それでは、」「またね、テツくん」というやり取りをして電話を切って横でこちらを見てくる火神くんに首を降ってみせると、さっきのように肩を落とされた。
「たく、何してんだよ、アイツ…」
「…そうですね…」
「何事もなくまた、連絡が来てくれればいいんですが、」と低い可能性にかてるように言うと、隣の火神くんが「…そうだな、」と自信なさげ木頷いたのが見えて。
“苗字さん、大丈夫ですか?”
届かないメールを送ってぎゅっと携帯を握る。
せめて、せめて安否だけでもしりたい。
そんな思いとは裏腹に、その日メール受信の着メロがなることはなかった。
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