夢小説 完結 | ナノ
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13 秀徳の鷹と


午後から体育館が使えなくなったせいで、暇になってしまった俺は、欲しかったシューズを探しにスポーツ店へ行くことにした。
もちろん、俺の相棒である真ちゃんも一緒に。

店に着いてから、自然と別行動になってしまった真ちゃんを探しながらもお目当てのシューズも探していると、


「(…オンナノコ?)」


あまりその場に似つかわしくない、女の子がいた。

キョロキョロと周りを見回しながら店内を歩いている彼女を、見ていると彼女がこちらを向いたとき、目があってしまった。


「…あ、」

『…』


お互い見つめあったまま、数秒間固まって、我にかえった俺は慌てて笑顔を向けた。


「なんか探してんの?」

『コクリ』

「あー…手伝おうか?」

『!!』


キラキラと目を輝かせてきた目の前の女の子を思わず可愛いと思ってしまった。

にっと笑いかけて、女の子に「どう?」と尋ねると、数回首を縦にふった女の子は小脇に抱えていた白いものを取り出した。


『〈苗字名前と言います、よろしくお願いします。〉』


内心ぎょっとしてしまった。
まさかボードが会話の手段だなんて思いもしなかった。
それでも平静を装うのはなかなか得意な方なので、何も気にしていないように「俺は高尾和成、秀徳の1年!よろしく!」と返した。


『〈1年生!同い年なんですね!〉』

「おっ、そうなの?じゃ、敬語はいらないぜ?」


「よろしくな、」と自分よりも低い位置にある頭にポンっと手をのせると、嬉しそうな笑顔が返ってきたのだった。




「これでいいの?」

『〈コクリ〉』


苗字ちゃんに頼まれて取ってあげたのは、水色と赤色のタオルだった。
笑って頷いてからそれを受け取った苗字ちゃんは「ありがとう、」と口を動かした。


「困ったときはお互い様っしょ」

『〈それでも本当にありがとう!高尾くん!〉』


柔らかな笑みを浮かべながらボードを見せてきた苗字ちゃんは、はっきり言ってかなり可愛い。

ニコニコと笑いながらタオルを見つめていた苗字ちゃんは、ふと何かを見つけるとそれも手に取った。


「それは?」

『〈リストバンドだよ。緑色の似合う友達にあげるんだ。〉』

「へー、」


ニコニコとした笑顔を浮かべる苗字ちゃんに、名前も知らないこの子の友人と言う奴等が妙に羨ましくなった。

レジに向かう小さな背中を見ながら、そういえばとうちの相棒はどこにいるのだろうかと考えていると、


『〈高尾くん、〉』

「え?ああ、苗字ちゃん、お会計終わった?」

『〈うん、それでね、これ、〉』

「ん?」


小さな苗字ちゃんの手に乗せられているのは、オレンジ色のリストバンド。


「これって…」

『〈高尾くんへのお礼のつもり。〉』

「いや、でも…」

『〈もぅ買っちゃったから…貰ってくれない?〉』


はい、と言うように差し出されたリストバンドと苗字ちゃんの顔を見比べてから、ゆっくりとその手からリストバンドを受けとると苗字ちゃんは今日一番の満面の笑みを浮かべた。


『〈ありがとう!高尾くん!〉』

「それ、俺の台詞、」


クスクスと笑った苗字ちゃんは、それからまた微笑むように俺を見たあと『〈それじゃあ、これで〉』とてを降ると出口の方へ歩いて行った。





「…ああ!連絡先聞いてねぇ!!」


という俺の叫びを聞いた真ちゃんが来たのは、そのすぐあとだった。

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