夢小説 完結 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

4 秀徳の緑色シューターと


いい天気だな、
そんなことを考えながら散歩をしていると、ふと目に入った緑色

何かをとろうと自販機の下に手を伸ばす姿はかなり浮いていて、通り過ぎる人たちはヒソヒソと何かを話しながらそれを見つめる

でも、緑色の髪のその人はそんなこと全く気にしない様子で必死に何かをとろうとしていて、なんだか数日前に黒子くんに会ったときの自分を思い出した


『…』

「…誰だ、」


そっと隣に近寄って、その人の肩を叩くと、振り返った緑頭の彼
その顔はとても美人で、けれど表情が険しいので少しだけ足が下がりそうになるのを堪えた


『〈どうしたんですか?〉』

「?」


この人も、きっと何か大切なものを探しているんだ、それならばあたしも黒子くんのようにこの人を助けたい

そっとボードを差し出すと、緑さんは少しだけ目を見開いてから体を起こすと、眼鏡を押し上げた


「…この下にゴルフボールを落としたのだよ…」

『?』


ボール?しかもゴルフの?
なんだかよく分からなくて首を傾げていると、緑さんがため息をついた


「…おは朝という番組知っているか?」

『(コク)』

「…そのラッキーアイテムなのだよ」


どこか言いにくそうな顔をした緑さん
なるほど、それがこの下に入ったのか、と一度頷いて、自販機を見る
確かに自販機の下には少しだけ空洞がある、この下に落ちたのだとすれば、取るには手を伸ばすしかない

「分かったら、さっさと往くのだよ」と隣で聞こえる声を無視して自販機の前にしゃがむと、驚いた声が聞こえてきた


「な、何をしているのだよ!?」


「やめろ!」と声をあげる緑さん
大丈夫です、と答えたいけれど、あいにく今の私にはそれを伝える手段がないのでそのままスルーさせてもらう

手を伸ばして見ると、自販機の角が擦れて少し痛い
私の腕でこれなら緑さんの腕では入らないだろうな、思いながら少し手を動かすと


『!』


何か固いものが手に当たった
もしや、と思って、なんとか指でそれを引き寄せると、手のひらに当たったそれは丸い形をしている
ホッとしてから、それを掴んで腕を引く抜いて体を起こすと、眉を寄せた緑さんと目があった


「全く何をしているのだよ!だいたい女子がそんなことをするものではないのだよ!!」


まるで保護者のように怒ってくる緑さんに苦笑いしながら、腕を出すと、緑さんが不思議そうな顔をした
そんな彼に手を開いて見せると、緑さんは目を見開いた


「っ、とって…くれていたのか…」

『(コクコク)』

「…そうか、…すまないのだよ」


申し訳なさそうにゴルフボールを手にした緑さんは寄せていた眉を少しだけ緩めて、どこか嬉しそうな顔をした

見つかってよかった、
そわな思いで緑さんを見つめていると、緑さんがボールから私に視線を移した


「…秀徳高校1年、緑間真太郎なのだよ」


「お前は?」と聞いてきた緑間さん
慌ててボートに自分の名前を書いて彼に差し出した


『〈苗字名前です、よろしくお願いします〉』


ペコリと頭を下げると「…敬語はいらないのだよ」と言う緑間さん、もとい緑間くんの声に頭をあげる


「…この礼はきちんと返したい」

『〈気にしないで、役に立てたならそれでいいの〉』

「そうはいかん、人事を尽くさないわけにはいかないのだよ」


なんだか少しオーバーな表現をする緑間くん
確かに私も青峰くんや黒子くんに助けて貰ったとき、お礼をしたいと思った
そう考えると彼の気持ちはよく分かる

じっと見てくる緑間くんに、再びボードを書き直すと緑間くんは驚いたようにそれを見た


『〈じゃあ、お友達になって下さい〉』

「友達、だと?」


意外そうに尋ねてきた緑間くんに笑って頷くと、緑間くんは少し迷ったように視線を迷わせてから、ゆっくりと息をはいた


「…仕方がないのだよ」


どことなく顔を赤くしてそう答えた緑間くんに更に笑顔を返す、緑間くんは眼鏡を押し上げた

それから、連絡先を交換して、また会う約束をしてから家に帰ったのだった

prev next