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大学1年になりました11


side高尾


俺には、好きな人がいる。ガキの頃からずっとその人憧れて、焦がれて、いつか隣に立てる日が来ることを望んでいた。
けれど、その願いも虚しく、彼女が俺を“男”として見てくれることはなく、未だに可愛い弟扱い。いや、まあ可愛がって貰えるのは嬉しいけどね?
彼女の…名前さんの目が愛しいと語るのは、いつだって指輪を見つめている時。俺が名前さんを好きなように、名前さんも指輪の先にいる誰かを好き。スゲエ不毛な恋だ。そう気づいて、中学の時、他の誰かを好きになろうとしたこともある。告白してきた女の子と付き合って、それなりに仲良く出来たけれど、結局それだけ。
俺の“好き”は、どうしたって名前さんから離れてくれなかった。









『あ、お疲れ様』

「へ?なんで名前さんが…?」


急遽決まった誠凛との練習試合を終えて、腹減ったーなんて食堂へ向かうと、エプロンを着た名前さんが迎えてくれて、ちょっと驚いた。てか、エプロン似合ってて可愛い。


『誠凛の夕飯の準備、早めに終わったから、秀徳の分もお手伝いしようかなって。あ、もちろん監督さんは了解済みだよ』


「もうすぐ出来るからね」と笑ってくれた名前さん。可愛過ぎるだろ、この人。口元を緩めて「はい!」と頷くと、クスリとまた柔らかく笑んでくれた。


「鼻の下伸ばしてんじゃねえ、焼くぞ」

「ゲッ!!み、宮地さん!」


準備をする名前さんを見ていると、目敏くも宮地さんに気づかれてしまったらしい。鼻の下なんて伸ばしてないっすよ、多分。
「いやあ」なんてヘラりと笑って見せると、盛大に顔を顰めた宮地さんに額を小突かれた。


「いって!ちょ、酷ぇっすよ宮地さーん」

「うるせえ」


ふんっと顔を背ける宮地さんに苦笑いしてしまったのは、俺だけじゃない。後ろの大坪さんや木村さんも笑ってますよ。分かりやすいなあ、この人。
小さく息をついてもう一度名前さんの方を見れば、忙しなく働いていた。そんな彼女を横目に、ゆっくりと口を開く。


「…宮地さん、」

「…んだよ」

「宮地さんも、名前さんと知り合いなんすよね」

「…」

「インターハイ予選の後、知ったんすよ。いつからの付き合いなんすか??」

「…俺が小6んときから」

「まじすか!?超長いじゃないっすか!」

「そういうお前は?」

「俺は…俺も、小6んときからっすね」


「お揃いですね」ふざけて笑ってみせると、どことなく不機嫌そうな顔をした宮地さんと目が合った。
いつものように物騒な台詞を言わない宮地さんは、迫力が2倍増しだな。なんて考えていると、宮地さんの目が鋭く細まった。


「…半端な気持ちなら、諦めろ」


たった一言、そう言った宮地さんに内心笑ってしまう。半端?まさか。


「これ以上ないくらい本気なんで、諦めろって言われたくらいじゃ、諦められねえんすよ」


「すみません」と思ってもいない謝罪を口にすると、少しだけ雰囲気が柔らかくなった宮地さんにクシャっと髪を撫でられた。

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