夢小説 完結 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

大学1年になりました10


合宿二日目。普段はしないような早起きをして朝食の準備に取り掛かる。途中手伝いを申し出てくれたリコちゃんが、プロテインを入れようとしているのを慌てて止めたりしながらも、なんとか作り終えて、食事を並べていると、「あれ?黒子と火神は?」降旗くんの声に食堂を見渡す。


「もう、遅いんだから…!ちょっと呼んでくるわ」

『あ、いいよリコちゃん。私が行くから、先に食べてて』

「え、でも…」

『いいからいいから』


眉を下げるリコちゃんの背中を押して席に座らせると、「すみません、お願いします」丁寧にお願いされて。うん、可愛いし、いい子だ。
サラサラの茶髪を撫でてから食堂を出ると、「なんでお前らがここに…!?」大我の声が響いてきた。水道の方だろうか。
声の方に向かうために方向転換して角を曲がると、赤と水色の他に、緑色を見つけて思わず声をだす。


『…緑間くんに、和成くん…?』

「え……え、えええええええええええ!?名前さん!?!?」

「!?苗字先輩…!?」


驚いたのはどうやらお互い様らしい。ビックリして固まっている私達を余所に「おはようございます、名前さん」挨拶をしてくれたテツヤくんに慌てて「おはよう、テツヤくん、大我」と返すと、ハッとした和成くんが勢いよく抱きついてきた。
あ、本物の和成くんだ。


「名前さん!!え、ほ、本物!?」

『うん。本物だよ』

「よ……よっしゃあああああああ!!なんかよく分かんねえけど!めちゃくちゃ嬉しいです!!!」

『あはは、大袈裟だよ』


ぎゅうぎゅう抱き締められながら、和成くんの頭を撫でていると、顔を赤くした緑間くんが持っていたハリセンで和成くんの頭をスパアアアンといい音をたてて叩いた。
「いってええええ!!!ちょ!な、何するんだよ真ちゃん!!」「黙れ!!いいから離れるのだよ!!」「嫌だし!」
何故か言い合いを始める2人にテツヤくんと大我と3人でポカンとしていると、今度は緑間くんの頭が凄い勢いで叩かれた。


「うるせえ!!騒ぐんじゃねえ!!轢くぞ!!!」

「な、なぜ俺が…」


ハリセンに負けないくらいの音をたてて緑間くんの頭を叩いたのは、私のよく知るハニーブラウンの彼。
何時もとは違い、眉間に皺を寄せて鋭い視線で緑間くんを睨んでいた清志くんは、今度は和成くんへと視線を移す。
そこで、漸く清志くんが私に気づいてくれた。


『おはよう、清志くん』

「……は……え、名前!?なんでここに…」

『誠凛の合宿のお手伝いでね』


ポカンと呆けた様子の清志くん。なんだか可愛いなあ。クスクス笑って答えると、さっきの和成くんのように、ハッとした清志くんは、今度こそ後輩である和成くんに目を向けた。なんだか、物凄い顔をしている。
「ヤベッ!!!」と未だに抱き着いていた和成くんが呟いたかと思うと、次の瞬間、和成くんは宮地くんに捕まっていた。ただしくは、ヘッドロックをかけられていたのだけれど。


「高尾!とりあえず死ね!!!」

「え!?ちょ、く、苦しいっす!!宮地さんストップストップ!!真ちゃん助けて!!!」

「自業自得なのだよ」


とりあえず、楽しそうだ。頬を緩めて3人の様子を見ていると、「そういえば」テツヤくんが思い出したように私を見た。


「名前さん、何か用事があってここへ来られたんじゃ?」

『え?…あ。そうだった…ご飯できたからテツヤくんと大我呼びに来たんだった』

「え?…おお、じゃあ、行くか」

「…そうですね」


未だにじゃれ合っている秀徳の3人をチラリと確認した後、食堂へ向かった2人。私はどうしようか。とりあえず、そろそろ和成くんが涙目になっているので止めてあげよう。


『清志くん、そろそろ離してあげて』

「……チッ」

「ゲホゲホっ!!うはあ…死ぬかと思った…」

「殺す気だったしな」

「…今の宮地さんに言われると冗談に聞こえないっす…」


涙目で咳き込む和成くんを見て、背中を摩ってあげると、清志くんの機嫌が更に降下していった。どうやら今日は虫の居所がかなり悪いようだ。
苦笑いを零して、今度はハニーブラウンの髪に手を伸ばそうとさたけれど、残念なことに身長が足りなくて頬を撫でる形になってしまった。清志くん、おっきくなったね。顔を赤くした清志くんに「や、やめろ!!馬鹿!!」と怒られた所で、3人以外の秀徳の皆さんが漸く顔をだした。


「お前たち、一体何を騒いでるんだ?…おや?そちらのお嬢さんは…?」

『初めまして。誠凛高校卒業生の苗字名前です』

「ああ、これはご丁寧に。秀徳高校バスケ部監督の中谷です」


深くお辞儀をして挨拶をすると、監督さんは柔らかく笑って手を差し出してきた。こんな小娘(精神年齢はおばさんだが)相手にも、きちんと対応してくれるなんていい人だ。
緩く笑んで中谷さんと握手をすると、手を離した中谷さんが「それで?」視線を清志くんたちへと移す。


「お前達、一体何を騒いでたんだ?」

『あ、あの!清志くん…み、宮地くんと高尾くんと緑間くんとは知り合いで…まさかこんな所で会うと思わなかったものですから、ついはしゃいでしまって…』

「え、ちょ、か、監督!悪いのは俺たちで、名前さんは何もしてねえっすよ!?」

「だろうな。お前たちのうるさい騒ぎ声は聞こえてきたが、彼女の声は聞こえて来なかったからな。だから苗字さん、君がそんな顔をする必要は無いよ」


ポンと肩に手を置いて、そう微笑んでくれた中谷さん。こんなに素敵な人が監督さんだなんて、秀徳は道理で強いわけだ。
「ありがとうございます」と言うと、中谷さんは緩く首を振ってくれた。


「さて、そろそろ練習の準備をするぞ」

「そうですね」

『あ、じゃあ私もそろそろ誠凛の皆の所に…』

「ええ!?名前さん誠凛の方行っちゃうんすか!?」

「高尾」

「…うっ…名前さん!また後で話ましょうね!!」

「おら!さっさと歩け!!轢くぞ!!」


清志くんに首根っこを掴まれながら、体育館の方へと歩いて行く和成くんに手をふる。
誠凛の夏合宿は、少し騒がしくなりそうだ。

prev next