夢小説 完結 | ナノ
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大学1年になりました2


終わりのブザー音が響く。
82対81。
誠凛高校が秀徳高校を下した。

喜ぶ誠凛の子達から視線を清志くんに移すと、悔しそうに顔を口元を歪めて顔を隠すように手で覆っていた。
ソッと目を伏せると、ポンっと肩を叩かれた。


『…翔一くん…』

「誠凛と秀徳の応援、来とったんですね」

『うん、誘われたからね』


気を使って声をかけてくれた翔一くんに、力なく笑い返すと思ったよりも大きな手が髪を撫でてきた。


「…行くん?」

『…うん、ちょっとだけ…行ってくるね』


「ありがとう」と笑ってから、向かう先はハチミツ色の髪の彼のもと。
なんとなく、会いに行った方がいい気がした。
少しだけ早足で秀徳の控え室に向かうと、ちょうどその手前でオレンジのユニフォームを来た三人組を見つけた。


『…清志くん、』

「!っ…名前…」


声をかけると驚いた顔で此方を見る清志くん。
もう泣いてはいないけれど、まだ目が赤い。
ソッと彼の頬に手を伸ばすと、清志くんの目がほんの少し見開かれた。


『…カッコよかった。』

「…けど、負けちまった…」

『それでも、カッコよかったよ』


綺麗な色の髪を撫でると、手持ち無沙汰だった清志くんの腕が腰の辺りにまわされた。
小さく震える体を抱き締めてあげようとしたとき。


「あー…その…すまん、宮地」

「…そろそろやめた方がいいんじゃないか?」

「『!!』」


戸惑いながらもかけられたストップの声に、ハッとして声の本人たちを見ると、赤くなった二人が気まずそうに頬を掻いた。
二人とも試合に出ていた。
清志くんのチームメイトだ。
慌てたように体を離した清志くんを見ると、火を噴きそうなほど顔を真っ赤にしていた。
可愛いなあ。


「えーっと…そちらは…」

『苗字名前です。清志くんとは幼馴染みみたいなもので』

「ああ、貴女が」


あれ?私のこと知ってるのかな?
キョトンとして大きな二人を見ると、「余計なこと言うなよ!轢くぞ!!」と二人の間に入ってきた。


「…ありがとな、名前。応援に来てくれて」

『ううん、いいの。…ホント言うとね、母校の応援も兼ねてたから…お礼を言われるようなことじゃないし…ごめんね』

「いや、それでも…嬉しかったよ」


緩く首をふってもう一度「ありがとう」と言ってくれる清志くん。
そんな彼に頬を緩めていると、携帯がポケットで震えた。
一言断ってから携帯を見ると、リコちゃんからのメールが来ていた。

“祝勝会で近くのお好み焼き屋さんに来てます!良ければ名前さんも来てください!”

メールの文面から伝わるリコちゃんの嬉しさに小さく笑うと、清志くんが不思議そうに首を傾げてきた。


「どうした?」

『ちょっとね。…もう、大丈夫?』

「…おう、ありがとな」

『いいの、私がお節介焼いただけなんだし。それじゃあ、ちょっと用事ができたから行くね』

「ああ、またな」


緩く手を挙げて応えてくれた清志くんに小さく手を振り返して、チームメイトくんたちに軽く頭を下げてから会場を出ると、軽く雨が降っていた。
このくらいなら大丈夫かな。

後輩たちに会ったら、先ずはなんて言おう。

空を見上げると、曇っているはずなのになんだか晴れやかに見えた。

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