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大学1年になりました3


「凄い雨だな…」


店内まで聞こえる雨の音に外を見ると、大粒の雨が空から止めどなく落ちていた。
名前さん、大丈夫かな。
ここに向かっているという彼女のことを心配していると、「伊月伊月!!」コガが楽しそうに手招きをしてきた。


「なんだよ?」

「アイツら、何話してるのかな!気にならない??」

「黒子は緑間や黄瀬と元チームメイトなんだから、話したいことだってあるだろ」

「でもさー!伊月ちょっとイーグルアイで何話してるか見てみてよ!」

「読口術は持ってないよ」


「えー!」なんてつまらなさそうに唇を尖らせたコガにはあっとため息をついたとき、ガラガラと店の引き戸が開く音がした。
「いらっしゃい!…って、どうしたんだい!びしょ濡れじゃないの!!」「すみません…あの、先に連れがいて…」「それはいいから!タオル持ってきてあげるから待ってなさい!」
店員さんと聞き覚えのある声の会話に、つられるようにそちらを見ると、パチッと彼女と目があった。


『おめでとう、皆』


そう微笑んでくれたのは、もちろん名前さんだ。
けれど、そんな彼女の祝いの言葉にも何も返すことができなかった。
それは、俺だけじゃない。
なぜなら、不思議そうに首を傾げる彼女の白いシャツは、雨に濡れたせいで彼女の下着を透かしていたのだ。
不自然なほど静かになった店内で、一番早く動いたのは、我らがキャプテンだった。


「っ!な、何してんすか!!」

『え?え??どうしたの日向くん?』

「どうしたのじゃないっすよ!!」


「これ着て下さい!!」と自分のジャージを名前さんに渡した日向にハッとして、次に動いたのは俺と監督。
慌てて名前さんに駆け寄ろうとしたとき、ガタッと椅子の引く音がして、つい足をとめた。
音の正体は、どうやら黄瀬が立ち上がった音らしい。


「っ…名前さんっ…」

『…き、せくん?それに緑間くんや和成くんに、幸くんまで…』


「どうしてここに?」と日向のジャージに腕を通した彼女が首を傾げた瞬間。


「すいませんでした!!!」

「「「「「!!??」」」」」


黄瀬が、ものすごい勢いで頭を下げたのだ。
なんというか意外だ。
思いもよらぬ光景に目を丸くしていると、そんな黄瀬に名前さんが小さく笑んだ。


『…どうして、謝るの?』

「っ、俺はっ、俺は…間違ってないと思ってた…でもっ!黒子っちたちに負けて気づいたんス!!中学のときの俺の、俺たちのバスケは…間違ってたんだって!!だからっ…!!」


店内に響く黄瀬の震える声が急に切れてしまった。
そこに、タイミング悪くも先ほどタオルを取りに行った店員さんが戻ってきた。
「どうしかしたの?」「いえ、タオルありがとうございます」
店員さんからタオルを受け取った名前さんは、それを持ったまま、未だに頭を下げ続けている黄瀬の元へと歩み寄った。


『黄瀬くん、顔…あげて』

「っ」

『ああ、ほら!人気モデルがそんな顔しちゃダメでしょ?』


ここからは見えないけれど、きっと黄瀬は情けないほど泣いているのだろう。
受け取ったタオルで名前さんが黄瀬の涙を拭っていると、黄瀬の手がそんな彼女の手をとった。


「っ、名前さん、俺は…!」

『もういいんだよ、黄瀬くん。あのときは私も言い過ぎたんだから』

「っ…名前、さん…」

『…今、バスケ楽しい?』


柔らかく目を細めて尋ねる名前さんに黄瀬は直ぐ様声をあげた。


「楽しいっス!!おれ、海常に入って良かったって思いますもん!!」

『そっか…それなら、いいんだよ。黄瀬くんがまた、バスケを楽しいって笑ってくれるなら、それでいいの』


ソッと黄瀬の髪を撫でた名前さんに、黄瀬は勢いよく彼女に飛び付いた。
……飛び付いた?
クワッと目を見開いて黄瀬を止めようと一歩踏み出したとき、俺よりも早くに二つの影が動いた。


「「黄瀬ええええええええええ!!」」

「ぐはっ!!!」


名前さんから引き剥がされた黄瀬は、虚しくも床に転がされたのだった。

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