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高校3年になりました12


「名前ちゃん、なんだか機嫌がいいなぁ」


リコちゃんの家のジムでのバイト中、影虎さんが不思議そうにそんなことを言ってきた。

リコちゃんのお父さん、影虎さんの言葉に「はい」と笑顔で頷くと「何かあったのかい?」影虎さんが聞いてきた。


『今日は高校の合格発表で、勉強を教えていた後輩から合格の報告がきたんです』

「ほー、そいつは良かったなぁ」


笑う影虎さんに、自分も満面の笑みを返す。

高校を無事卒業して、大学にも推薦で合格したけれど、大我とテツヤくんの合格は、自分のものより嬉しい。
ふふっと笑っていると、「名前さん」とリコちゃんがジムに顔をだした。
「リコたーん!!!」「近寄るなああああ!!」「グホッ」なんていうちょっと過激な親子のスキンシップにももぅ慣れて、苦笑いしながらそれを見つめていると、影虎さんに見事なストレートパンチを与えたリコちゃんが思い出したように私をみた。


「名前さん、もうすぐバイト終わりですよね?」

『うん、そうだよ』

「今から鉄平の所にお見舞に行くんですけど、名前さんも一緒に行きませんか?」


可愛らしく首を傾げて尋ねるリコちゃん。
「リコたん天使っ!」と悶えている影虎さんに、こっそりと同意しながら「行こうかな」と返すとリコちゃんは安心したように笑った。

多分、まだ少し気まずいのかもな。
実はつい先日、リコちゃんと木吉くんは別れてしまった。
理由を聞いてはいないけれど、別れを切り出したのはリコちゃんかららしい。
ようやく起き上がった影虎さんに「お疲れ様です」と苦笑いしながら言うと「おう、お疲れさん」と影虎さんも片手をあげて返してくれた。
それから着替えてリコちゃんとジムを出ると、まだ3月とだけあって少し肌寒い風がふいた。


『まだ寒いね』

「そうですね。季節の変わり目ですし…体調管理に気を付けるように言わないと」


監督の顔をしてそういうリコちゃん。
そんな彼女に、少し迷いながら「ねぇリコちゃん」と声をかけると不思議そうに「なんですか?」と視線を合わされた。


『…木吉くんと、どうして別れたのか聞いてもいい?』


不意打ちにそんなことを聞かれたからか、リコちゃんの大きな目が更に見開いた。
それから、ブラウンの瞳をゆらゆらと揺らした彼女は言いにくそうに口を開いた。


「…鉄平のことは好きです。でも、なんだか分からなくなったんです」

『何が?』

「…この好きが“恋”なのかどうか、です」

『木吉くんのことが好きなら、それは恋なんじゃないの??それなのにどうして…?』

「…迷ってしまったんです、多分。鉄平への気持ちが本物なのか、それとも……もう一人、鉄平じゃない彼への気持ちが本物なのか」


憂いを帯びた表情で目を伏せるリコちゃんの言葉に頭を過ったのは不器用な主将くん。
名前を伏せているのは、多分言いづらいからなんだろうな。
思わず足をとめると、隣を歩いていたリコちゃんも足をとめた。
「名前さん?」不安そうに首を傾げるリコちゃんの髪に手を伸ばして、そのブラウンの髪を撫でるとリコちゃんが少しだけ目を丸くした。


『リコちゃんは、真っ直ぐだね』

「え…?」

『中途半端が嫌で、木吉くんと別れたんだよな?私は、リコちゃんのそういう真っ直ぐな所、凄く好きだよ』

「っ、名前さん…」


あ、泣かせてしまった。
ポロポロと涙をこぼすリコちゃんを軽く抱き締めると、小さな小さな泣き声が耳に届いた。


『恋愛に正解なんてないよ。だから、リコちゃんの選択は間違ってない』

「でも…!私、鉄平を傷つけたかもっ…」

『大丈夫。木吉くんは分かってくれてるよ』


「だから、泣かなくていいんだよ」とリコちゃんの背中を撫でると「っ、すみません…ありがとう、ございますっ」謝罪とお礼が一緒に返ってきて、本の少し笑ってしまった。


それから、リコちゃんが泣き止むのを待ってから二人で木吉くんのもとを訪れると、先客として日向くんがいた。
きっと日向くんはリコちゃんが木吉くんと別れたことは知っているのだろう。
それでも、彼はそれをチャンスだなんて思わない。
むしろ、二人の別れを悲しむのだろうな。

楽しそうに談笑する3人の姿を見ながら、どうか3人が幸せになれる道があることを願うのだった。

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