高校3年になりました11
「勉強、教えてくんねぇ?」
こういうのをデジャブって言うんだっけ?
大我に誘われて、彼の家で夕食をご馳走になっていたある日。
大我が徐に口を開いたかと思うと、さっきの台詞を言われた。
『別に大丈夫だけど…』
「ホントか!?」
『でも、今他の子にも教えてて、あんまり頻繁には来れないよ?それでもいいの?』
「おう!サンキューな!」
嬉しそうに笑う大我はなんというか年相応だ。
ふふっと笑みを溢すと、笑顔だった大我が急に申し訳なさそうな顔をした。
「…なぁ、本当にいいのか?名前だって受験あんだろ?」
『私は平気だよ。推薦で決まりそうだしね。それより、大我はどこの学校に行きたいの?』
「…あー…誠凛」
え、今なんて?
ちょっとビックリして大我を見ると、照れ臭そうに頬をかいていた。
大我が誠凛に。
それにテツヤくんも。
もし二人が受かれば、きっとバスケ部に入る。
それって何だかスゴく面白そう。
ついつい笑いを堪えきれず、声に出して小さく笑っていると、大我が不思議そうに首を傾げてきた。
『あ、ご、ごめんごめん。でも、大我うちに来るって言うけど…もっとこう、バスケの強豪校とかに行かなくていいの?』
「…いいんだよ。どうせどこも同じだろ、日本のバスケなんてさ」
冷めた目を細める大我。
きっと日本に戻ってきてから、あまりいい相手に巡り会えなかったんだろうな。
けど、高校に行ってテツヤくんと出会えば、そんな大我の考えも変わるはず。
『…なんだか、春が来るのが待ち遠しいなぁ』
「は?はる?」
『うん。大我がうちの制服着るとこ、早くみたいもん』
ふふっと笑ってそう言うと、大我の頬がほんのり赤くなる。
ホント、可愛いなあ。
今年卒業するのが残念だ。
「大我は可愛いね」「なっ!や、やめろよ!男に可愛いとか!」「だって可愛いものは可愛いし」
最近は幸くんや清志くんに可愛いと言えないし。
スゴく不機嫌になっちゃうからな。
大我もいつか可愛いって言ったら怒るようになるのかな。
「?なんだよ?」
『大我は、ずっとそのままでいてね』
「は?んだよ、それ?」
『そのままの意味』
止まっていた箸を動かして、大我特性のハンバーグを食べると、やっぱりとても美味しい。
怪訝そうな顔で私を見ていた大我も、聞くことを諦めたのか、自分のハンバーグを食べ始めた。
大きな大きなハンバーグを、口一杯に詰め込んだ大我は、やっぱり可愛くて、笑ってしまった。
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