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高校3年になりました6


幸くんからバスケ部復帰&キャプテン就任報告を受けた。
「ありがとな」と電話越しに言ってくれた幸くんにに、神奈川まで行ったのは無駄足じゃなかった、なんて思い返しているとチリンチリンと鳴った扉。
そうだ、バイト中なんだから集中しなくちゃ。
「いらっしゃいませ」とそちらを見ると、入ってきたのは随分久しぶりにきた常連の彼。


『…いらっしゃい、真くん』

「…」


笑顔で迎えたけれど、返ってきたのは無言。
相変わらず素直じゃない。
黙ってカウンター席に座る彼に苦笑いをしてから「いつものでいいの?」と聞くと、閉ざされていた口がようやく開いた。


「…なんで何も言わない?」

『…なんのこと?』

「ふはっ、惚けてんじゃねぇよ。木吉のこと壊したの、誰だと思ってんだよ」


ああ、やっぱりそのことか。
ニヒルに笑う真くんに小さく笑うと、眉を寄せられた。
何笑ってんだ、的な顔で。


『私は怒らないよ。だって、木吉くん本人が真くんのこと怒ってないんだもん。私が怒るのは筋違いでしょ?』

「…甘めぇよ、あんた」

『そうだね、私は甘いのかもね』


不機嫌さを余すことなく露にする真くんに思わず笑っていると、「おや、随分久しぶりだね」とマスターが現れたので、そこでその話は終わりとなった。

実際、真くんに注意の1つもしたくなかったと言ったら嘘になる。
でも、結局私はバスケは初心者だ。
言ったところでしょうがないだろう。

素の自分を出してマスターと話す真くん。
彼がバスケを嫌いでないのなら、今はいいのかもしれない。










「あ、名前さんっ!!」

『久しぶり、和成くん』


バイト帰り、和成くんと健介くんとバスケをした例の公園へ寄ると、待ち合わせ人は先についていた。
「お久しぶりです!」と笑う彼はいつも通りで少しホッとした。


「あの…試合せっかく見にきてもらったのに、俺負けちゃって…だから…」

『謝らなくていいからね。和成くん、ちゃんとかっこよかったよ?』

「…負けたのに?」

『負けたらカッコ悪いなんて誰が決めたの?何がかっこいいのか決めるのは私だよ。だから、和成くんはかっこよかったんだよ』


「ね?」と言いながら、少しだけ嬉しそうに笑う和成くんの頭を撫でると、彼の頭が前に会ったときより高くなっていることに気づいた。


『…和成くん、背伸びたね』

「え?…あー、けどもう少し欲しいんすよね」

『もう十分大きいけどなぁ。私なんてとっくの昔に越しちゃってるし』

「高校でバスケやるなら、もっとでかくなった方が有利っすからね」


自分の頭を撫でながらそう言う和成くんにちょっと嬉しくなる。
よかった、高校でもバスケをするんだ。
「伸びるといいね」と笑いかけると、どうしてか和成くんが寂しそうな顔をした。


『和成くん?』

「…おれ、名前さんの高校に興味があったんだ」

『え…誠凛に?』

「うん…だけど…やっぱり俺、秀徳を受けることにしたんす」


秀徳…ということは、清志くんのいる学校。
「名前さんの後輩になるのもいいけど、俺、高校で倒したいやつがいるから」と笑う和成くんはやっぱり男の子だ。

背も伸びて、強くなろうとしている。
和成くんはこれから、ドンドン大きくなっていくんだろう。私なんて追い付けないくらい。

ちょっとだけ感じる寂しさを隠すように目を伏せると「名前さん?」と和成くんに顔を覗き込まれた。
それに笑って返すと、和成くんもまた笑ってくれるのだった。

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