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高校3年になりました


虹村くんがアメリカに飛びだってから少しすると、私は二度目の高校3年生となった。

“オレ達バスケ部は日本一目指して、全国大会に今年必ず出ます!!”

数日前の朝礼で、屋上から叫ばれたこの台詞。


『(ついにうちの学校にもバスケ部ができるのか、)』


帰りのホームルームで先生の話を聞きながら、そんな事を考えていると、「起立」とクラス委員の声がした。
ぼんやりした意識のまま、立ち上がって頭を下げると、次々に皆が教室から出ていくなか、なんとなく指輪に手を伸ばしたとき。


『っ、え…?』


いつもなら、そこにあるはず。それなのに、ない。
サアッと全身から血の気が引く。
ない、ない、ない、ない。
指輪が、和也さんとの指輪が、ないっ。

鞄をひっくり返して中身をみるけれど、そこに探しているものは見つからなかった。
どうしよう…どうしよう…!!
視界かジワジワと歪んできたとき、ハッとした。
そうだ、最後の時間は体育で、そのときに指輪を外したんだった。


『っ、和也さんっ…』


荷物なんて気にしていられない。
教室から走り出て、一直線に体育館へ向かっていると、まだちらほらと残っていた他の生徒たちから奇妙な目で見られた。
でも、そんなこと気にもとめられない。

ガラッと大きな音を立てて体育館の中へ入ると、中にいたのは女の子が1人と、男の子が数人。
そうか、こっちの体育館はこの子達が使うのか。
普段なら彼らに一言断っている所だけれど、そんな余裕あるはずもなく、備え付けてある女子更衣室に走る。


『っ!ない…!ない、ないっ!どうして、どうして…!』


女子更衣室の棚という棚の全てを見た。
それなのに、ないのだ。

床に座り込んで、瞳を揺らしていると、「あ、あの…」と誰かが控えめに肩をたたいてきた。
ゆっくりと後ろを見ると、心配そうに、けどどこか不安そうな顔をしたショートカットの女の子がいた。


「あの…何か探されているんですか?」

『っ…指輪が…和也さんとの指輪がっ…!』

「指輪?」


不思議そうに首を傾げたのは、女の子の後ろにある女子更衣室のドア付近に立っていた背の高い男の子だった。
あれがないと、私は…私は…、いったい何にすがればいいのだろう。
震える唇を噛み締めて、コクコクと頷くと、「分かりました」と男の子が大きく頷いた。


「よし、探すぞ!」

「おう」

「オケもってオッケー!」

『っえ…?』

「こういうのは皆で探した方がいいですよ」


「一緒に探させて下さい」そう笑った女の子に、心の奥がジンワリと温かくなる。
「ありがとう」と言うと、「それは探し物が見つかってからでいいっすよ」と眼鏡をかけた男の子が笑った。











「あった!!これじゃないか!!??」

『!!!』


体育館を隈無く探しはじめて数十分。
黒髪の美少年くんの言葉に、慌てて彼に走り寄ると、その手には確かに私の指輪があった。
「カーテンの下に隠れてましたよ」笑顔で、指輪を渡されると、手の平に乗せられた感覚にひどく目頭が熱くなった。


『っ…あり、がとう…!!ありがとうっ、本当に、ありがとう…!!』


何度も何度もお礼を言っていると、自分の頬に何かが流れた。
それを見た黒髪くんは目を見開いたあと、柔らかく笑った。


「いえ、見つかって良かった」

『…あの、皆さんも、本当にありがとうございましたっ…』


黒髪さんと他の人達に頭を下げると、良かったと、皆口々に言ってくれた。
ああ、なんていいこ達なんだ。
ギュッと指輪を握りしめてもう一度お礼を言うと、皆、まるで自分のことのように嬉しそうに笑ってくれたのだった。

そんな彼らは、なんとあのバスケ部らしい。


和也さん。
もしかして、この子達も、この指輪が会わせてくれたのかな。
あなたが会わせてくれたのかな。
あなたの大好きなバスケをしている人を見るのは、私への罰なのかもね。

キラリと光る指輪が、まるでそれを肯定しているように見えた。

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