夢小説 完結 | ナノ
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高校2年になりました16


夏が終わると、あっという間に秋も過ぎ、季節は冬になる。
はあっとはいた息が白くなるのを見て、今日も寒いなあ、なんて思っていると、「名前!」と待っていた人物がようやく現れた。


「悪い…遅くなった…」

『気にしないで。それより、久しぶりだね、大我』


「おう!」と笑った大我に、わたしもニッコリと笑みを返す。

つい先日、大我は日本に戻ってきた。
なんでも、お父さんの仕事の都合らしい。
「こっちに来たら、先ず名前に会おうと思ってたんだ!」なんて嬉しいことを言われたのが、昨日のことで、さっそく会うことになった。

他愛のない話をしながら向かうのは、大我の日本家。
一緒にご飯を食べようと提案した所、それならと、彼の家で作って食べることになったのだ。


「ここだぜ」

『…わぁ…お、お邪魔します』


大我の案内で連れてこられた、新火神家は、二人暮らしにしてはかなり大きな部屋だった。
大我って、もしかすると意外と育ちがいいのかも。
ほぅっとしながらキョロキョロとしてしまうと、「何してんだよ?早く作ろうぜ」とキッチンに引っ張られた。










『よし、それじゃあ』

「『いただきます』」


大我と二人での料理は、とてもスムーズに進み、あっという間に出来上がってしまった。それも、かなりの量が。
まあ、大我はとんでもない大食いだもんな。
なんて考えながら、モグモグと食べ進める大我を見ていると、「?どうした?食わねえのか?」と首を傾げられた。
それに笑って頷いてから、箸を動かすと、大我も自分の箸を再び動かし始めた。


『…そういえば、アレックスさんや辰也は元気?』

「!…あー、うん。アレックスは元気だぞ」

『辰也は?』

「…」


あれ?なんだか表情が暗い。
ようやく動き始めた箸をとめて、「何かあったの?」と大我を見ると、大我は悲しそうに胸元のリングを握った。


「…おれ、辰也に嫌われたかも」

『え?』

「…アイツに、悪いことした…」


グッと下唇を噛む大我は、悲しそうに瞳を揺らしながら、何があったのか話してくれた。

辰也が、勝負に負けたら兄弟をやめると言ったこと。
でも辰也は怪我をしていて、そんな彼に手を抜いてしまったこと。
そして、次の勝負でリングをかけることになったのだけれど、その前に日本へ帰ってしまったこと。

ゆっくりだけど、どこか焦ったように話終えた大我はソッと切れ長の目を細めた。


『…そっか、そんなことが…』

「手を抜くなんて、馬鹿なことをしたって思ってる。けど…俺は、タツヤと…兄弟のままでいたいから…」


箸を握っている手に力が込められている。
その手を、ソッと両手で包むと、大我の肩が揺れて、顔をあげた。


『…私もね、辰也のこと、嫌いになろうと思った』

「は!?」

『けど…出来なかったの。恩を仇で返したくなかったし、何より…私自身が辰也を好きだったから』


辰也や翔一くんの想いを知ったとき、一番いいのは、彼らを嫌いになって、彼らにも嫌われることだと思った。
けれど、私にはそれが出来なかった。

単純に怖かったのだ。嫌われることが。


『…誰かを好きになることって難しいことだけど、私は…好きな人を嫌いになることの方が難しいと思う』

「…」

『辰也はね、大我のことが好きだよ。その気持ちに嘘はないとおもう』

「じゃあ…!なんであんなこと…」

『…辰也にも、プライドがあるから、かな』

「プライド?」

『お兄ちゃんはね、弟には、いつまでもかっこよく思われたいんだよ。きっと』


よく分からない、という顔で眉を寄せる大我。
「まあ、これはあくまでも私の考えだけどね」と付け足すと、更に怪訝そうに眉を寄せた。

確かに辰也は、大我に嫉妬をしていた。
けれど、それでも大我を憎めずにいたのは、彼が大切だったからだろう。
気持ちの矛盾。
それが嫌で、辰也はプライドを選んだのだ。
それが、大我のためにもなると信じて。

難しい。
きっと正解なんて、ない。
それでも私は、彼らには仲良しでいて欲しい。


『…ねえ、大我』

「?なんだよ?」

『大我は、辰也が好き?』

「……俺は……辰也のこと、好きだよ。大切な兄貴だ」

『…そっか。じゃあさ、その気持ち、忘れないでね』

「は?」

「なくしてからじゃ、取り戻せないものもあるから。だから、忘れないでね」


ソッと指輪を撫でながら言うと、少し眉を下げた大我は「…分かった」と頷いてくれた。

どうか、大我の思いが遠いアメリカの地にいる彼にも届きますように。


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