夢小説 完結 | ナノ
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高校2年になりました14


「…」

「…」

「…」

『…』


これ、どういう状況?


バイトのない休日。
健介くんのおじいちゃんおばあちゃん家へ行くと、なんと健介くん本人もいた。
なんでも、三連休に遠征でこちらに来ていて、明日は休みなのでこっちに泊まるらしい。
「久しぶりだね!」「はいっ!!」「元気だった?」「もちろんです!名前さん、アメリカはどうでした?」「楽しかったよ」
他愛もない話をしながら、以前一緒に行った公園へ行くと、先客がいた。
誰だろう、健介くんと二人で公園に入ると、1on1をしていたのは、なんと幸くんと清志くんだった。
「幸くん!清志くん!」と二人に声をかけると、パッとこちらを向いた二人が笑顔で駆け寄ってきた。
けれど、二人の視線が健介くんに向けられると、その笑顔は消えてしまい、そして、冒頭に至る。


ジッと動かない三人に、なぜか私が冷や汗をかいてしまう。
とにかく、何か話そう。


『ま、まさか幸くんと清志くんまで居るとは思わなかったなー…』

「…名前、どうして陽泉の福井と一緒なんだよ?」

『…清志くん、健介くんと知り合い?』

「…そりゃ、バスケ上手いヤツなら大概は知ってるから…」

『へえ…じゃあ幸くんも?』

「ん?…ああ、まあ…」


そっか、そういえば三人とも、去年の全中に出ていたしな。
スゴいなぁ、と感心していると、健介くんが「名前さん、」と声をかけてきた。


『うん?なあに?』

「…笠松と宮地とは、その…どういう… ?」

『え?あー…うーん…』


以前なら“弟みたいな子”と説明していた。
けれど、今それを言うのはどうなのだろう?
皆もう高校生なわけだし、それに…

“男として、見てくれるんだよ!”

そう、幸くんに“男の子”として見て欲しいと言われているのだ。
うーん、と首を捻っていると、三人が不思議そうに見てくるものだから、慌てて笑顔を作る。


『……な、仲良しさん、かな?』

「…そう、なんですか…」


「も、もちろん健介くんもだよ!?」と言うと、ちょっと驚かれたあと、「ありがとうございます」だなんてはにかまれた。可愛い。

久しぶりに見た健介くんの笑顔に頬を緩めて、彼のキラキラとしている髪を撫でていると、その腕を捕まれてしまった。


『…き、清志くん?』

「…」


ムスっとしている清志くん。
あ、もしかして、清志くんも撫でて欲しいのかな。
捕まれている腕と反対の手を伸ばして、清志くんの髪に触れると、細められていた目が大きく開かれて、真っ赤な顔を向けられた。可愛い。

となると、次は幸くんだろうと、清志くんから離れて幸くんに手を伸ばすと、清志くんよりも頬を赤くした幸くんが目をあわせてきた。可愛い。


「や、やめろよ…!が、ガキじゃねえんだ!」

『はいはい』


クスリと笑って手を離した所で、そういえば、なんで神奈川にいるハズの幸くんいるのだろうか、と考える。


『幸くん、どうして東京に?』

「え?あ、ああ、…練習試合があって、明日は休みだったから…こっちで新しいバッシュ買って帰ろうとしたら、ここに宮地がいて…」

『それで二人仲良くバスケを?』

「…まあ」


幸くんと清志くんが仲良くしてるだなんて、なんだか嬉しいな。
ふふっと笑っていると、幸くんが首を傾げてきた。
それにニッコリと笑って返すと、清志くんと幸くんの間から、さっきまで二人が使っていたバスケットボールが目にはいる。
二人の間を通ってそのボールを拾うと、三人が頭にハテナマークを浮かべた。


『…2対2、しよっか!』

「「「は?」」」


何言ってんだ?
なんて顔をしてくる三人を無視して、「ほら、チーム分けしよ!」とグループ分けのための歌を歌って手を出すと、反射的なのかなんなのか、三人も手を出してくれた。
私と幸くんがグー、清志くんと健介くんがパーだ。


『よし、じゃあ始めよっか!』

「…お前、バスケしたことあんのか?」

『体育でなら、後は…うん』

「それでよく、しようなんて言い出したな」

『えー?じゃあ、しない?』

「……やる」


ニヤリと挑発的に笑うと、簡単に乗ってきてくれた清志くん。
そんな彼に苦笑いした健介くんもこちらへ歩いてきた。参加してくれるみたいだ。
もちろん幸くんもするよね?と言うように幸くんにボールを投げると、呆れた顔をしながらも、何処か嬉しそうな様子でそのボールを受け取ってくれた。










『…もう……ムリ……っ!!!』

「…言い出しっぺが何言ってんだよ、焼くぞ」

「普段の運動不足のせいだな」


バスケを初めて約小一時間。
息も絶え絶えになりながら、ベンチに腰かけると、呆れた顔の三人がそんな私を囲んだ。
やっぱり現役バスケット選手に混ざってバスケをするなんて無謀だったか。

はあっと息を大きく吐いていると、「ほら」幸くんがスポーツドリンクをくれた。
ありがたくそれを受け取って、喉を潤すと、ようやく落ち着いてきた。


『…やっぱり年かなぁ…』

「いや、名前さんまだ高2ですよね?」


こそりゃ、ここの私はピチピチの17才だ。
でも、気分的には、もう30を越えている。
前の世界の年齢+17の精神年齢なのだからそんなは風に思えても仕方ない。
苦笑いを溢して、もう一度喉を潤し視線を下げた所で、胸元で揺れる指輪が目にはいった。

“ほら、名前もやってみろ”
“無理だよ”
“教えてやるって!”


『……清志くん、ボールかして?』

「なんだよ?まだやるのか?」

『…ちょっとね』


受け取ったボールを持って、フリスローの距離くらいでゴールを見上げる。
数回ボールをついてから、シュートのモーションに入ってボールを投げると、弧を描いたボールは、ボードに当たってから綺麗にリングをくぐった。

ああ、覚えているものだな。

和也さんが教えてくれたシュートは、“こっち”の私にも染み付いていた。


「…名前姉…その、シュート…」

『…様になってるでしょ?』


驚く幸くんたちに、笑ってみせてから、転がったボールを拾う。
右手にボールを抱え、左手で指輪に触れると、和也さんが褒めてくれいるような感じがした。

“入った!入ったぞ!名前!!”

私が初めてシュートを決めたとき、彼は私よりも嬉しそうにはしゃいでいたな。
指輪をはなして、もう一度シュートを打つと、放たれたボールは“ガンっ”と音をたててリングに弾かれた。
そう、何度も上手くいくわけないか。
苦笑いをしてボールを拾おうとしたとき。


「下手くそ」

『え…』


横から伸びてきた手が、私よりも早くボールを拾った。清志くんだ。
「見てろ」と言った清志くんは、ゴールからちょっと離れると、流れるような動きでシュートを打った。
吸い込まれるようにリングを通ったボール。
見ろ!というように私を見た清志くんは、全然違うのに、なんでか、和也さんに重なった。


『っ……』

「?名前姉?」

『…ナイッシュっ、…か……清志くん…』


思わず和也さんと言いそうになった。
ちょっと戸惑った顔をしたあと、「…おう」と眉を下げて清志くんは笑ってくれた。


それからは、三人がバスケをしているのを見学していた。
あそこに和也さんがいたらな、なんて考えていると、三人に手をふられた。
それが、なんだかスゴく心苦しかった。

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