夢小説 完結 | ナノ
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高校2年になりました


無事に高校2年生となった平日の夕方。
コンビニでのバイト中、凄い勢いで金髪の彼が入ってきた。


「おれっ!バスケ部入るっス!!」


そのときの黄瀬くんは、ここ最近の彼の中で一番嬉しそうな顔だった。










『へぇ、そんなに凄かったんだね。バスケ部のその子』

「そりゃもう!!」


品出しをしている私の横で黄瀬くんは興奮した様子でさっきからずっと話をしている。

高二になってからも続けているコンビニバイト。
黄瀬くんも飽きずによく足を運んでくれていたのだけれど、ここまで興奮した彼は初めて見た。
なんだか嬉しくなって口元を緩めていると黄瀬くんが不満そうに唇を尖らせた。

「ちょ、聞いてるんスか!?」「聞いてる聞いてる、それで?」「それでっスね!!」

黄瀬くんも青峰くん並みに単純だなぁ。
綺麗になった棚を確認してから飲み物コーナーへ移動すると案の定黄瀬くんも後をついてきた。
もちろん口を止めるとことはなく。


「おれ!決めたっス!!バスケ部に入って絶対あの人を倒すっス!!」

『ふふ、そっか』

「はいっス!」


キラキラとした笑顔で大きく頷いた黄瀬くん。
うん、やっぱり若い子はこうでなくちゃ。
いつも学校の話になると冷めている彼だけれど、これを機に彼は変われるだろう。

良かった、とバレないように息をはいたあと「けど、」と黄瀬くんは今度は悲しそうに顔を俯かせた。


『?けど、なに?』

「…俺、部活に入ったらあんまりここ来れなくなるかも…」


あ、そういうこと。
クスリと笑ってから、手を伸ばして綺麗な金髪に指を通すと、思っていたよりもずっとサラサラしていた。
さすがモデルだ。


『大丈夫。私結構遅くまで働いてるから、部活の後でも会えることもあるよ』

「…」

『それよりもね黄瀬くん。私は、君が楽しいって思える事を見つけてくれた事の方が嬉しいよ』

「名前さん…」

『きっと面白いよ。バスケ!』


「今度差し入れでもするね」と笑うと黄瀬くんはうって変わってまた嬉しそうに笑ってくれた。


『(それにしても、バスケ部…か)』


私の回りの後輩たちは何の因果かバスケ部ばかりだ。

ねぇ和也さん。
もしかして、貴方が私に彼らを引き合わせてくれてるのかな?
それは私が寂しくないようしてくれてるの?
それとも、バスケをしている彼らを見て、貴方の事を忘れないようにするため?

ぼんやりとしていると「名前さん?」黄瀬くんが心配そうに顔を覗き込んできた。


『…ごめん、なんでもないよ』

「けどっ…また、ソレ…触ってるから…」


え、と思って指先を見ると、服の下にある指輪を触ろうとしていた。

私、末期かもなぁ。
自嘲気味に笑って手を離して黄瀬くんに笑いかけてみせると、どうしてか黄瀬くんは泣きそうな顔をしていた。


『…黄瀬、くん?』

「…居なくならないっスよね…?」

『…な、、に…言って…』

「急に…急に、居なくなったりしないっスよね!?会わなくなったら急に消えちゃったり、なんて…」


「ないっスよね!?」こんな黄瀬くんも初めて見た。
今日はたくさんの表情が見れるな。
居なくならないよ、そう一言言ってあげればいいのに、私はそうは言えなかった。


『ねぇ黄瀬くん』

「…なん…スか?」

『…前に好きな子はいないのか、って聞いたよね?』


それがなんなんだ。
まるでそんな顔をする黄瀬くんに苦笑いをする。


『黄瀬くんが本当に誰かを好きになって、その人が遠い遠い所へ行ってしまったら…』


“君は、どうする?”


自分の声がやけに響いた気がした。
目を見開く黄瀬くんはハッとした後、何か答えようとしてくれたのだけれど、何と言えばいいか分からない顔をしていた。


『…ごめん、意地悪な質問だったね』

「…あの…名前さんは…どう、するんスか?」

『………私は…』


私だったら多分、いや絶対。
いつかもう一度、その人に会いたいと思ってしまうだろう。だから、きっと…


「すいませーん、レジいいですか?」

『あ、はい!…ごめん、黄瀬くん。この話はまた今度ね』


「はい、」といつものようにミネラルウォーターを渡すと黄瀬くんはとても心配そうな顔を返してきた。
それに曖昧に笑って返して、逃げるようにレジへ移動した。









和也さん。
私、やっぱり貴方に会いたいよ。
もし、この世界に貴方がいるなら、早く…早く会いに来てよ。
ねぇ和也さん。

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