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eleventh


最っっっ悪な事態になった。これはもう、絶体絶命と言っても過言ではない。


担任に呼び止められたため、ほんの少し遅れて部室へ行くと、誰かが部室前で固まっていた。よく見ればそれは木兎さんの想い人でもある苗字先輩で。どうしたのだろうと声をかけると、振り向いた彼女は、泣いて、いたのだ。
目を丸くして引き止めようとしたけれど、伸ばした手は1歩遅く、空を切ってしまい、先輩はそのまま走り去ってしまった。
そんなやり取りが合ったとか露知らず、笑いながら部室棟から出てきた木葉さんに「赤葦どうしたー?」と声をかけられた時、思わず睨んでしまったのは、許して欲しい。
「!?な、なんだよ赤葦??」「…何話してたんですか…?」「はあ?何って…」「今、苗字先輩がここに居たんです!」「っえ!?」
ギョッと目を丸くする木葉さんと小見さん、そして、呆然としたまま固まる木兎さん。これはもう、この反応だけでもわかる。

最悪な事態になった。












「……赤葦、木兎はどうした?具合でも悪いのか?」「…そんな所です」「?そうか…無理そうなら止めてくれよ」「はい、分かりました」
監督との会話に、木兎さんをみると、いつもの五月蝿さを失ったエースは、いくらスパイクを決めても、気落ちしたままだった。
…そもそも、嘘なんてついて苗字先輩に近づこうとした木兎さんも木兎さんだが、それだけ、彼女が好きだったということなのだろう。
休憩に入ったタイミングで、肩をおとしてため息をつく背中に声をかけると、ショボくれモードの時の比ではない程暗い顔をした木兎さんが振り向いた。


「木兎さん、そんなに落ち込んでも、何も変わりませんよ」

「あかーし…」

「明日、正直に謝るしかありません。本に興味あるなんて嘘をついた木兎さんが悪いんですから」

「うん…分かった…」


ショボンと音が付きそうな程、背中を丸めて俯く姿は、到底全国5本の指に入るスパイカーとは思えない。
苗字先輩なら、きっと許してくれるだろう。彼女も、少なからず木兎さんに好感を持っているハズだし。まあ、今その好感度がガタ落ちしているかもしれないが。
明後日には音駒との練習試合も控えているし、どうにか明日、木兎さんには謝ってもらおう。



そんな願いを込めた翌日、苗字先輩は学校へ来なかった。

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