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高校1年になりました2


健介くんとの約束通り、翌日も彼の祖父母の家に遊びに行った。
「あらあら、いらっしゃい!」優しい笑顔で迎えてくれたお祖母ちゃんとお祖父ちゃんとそして健介くんと四人で少しお喋りをして、それから健介くんの「バスケしてぇ」の一言で二人で近くのゴールがある公園に来たのだけれど。


「名前さんっ!見てました!?俺今シュート決めたんですよっ!!!」

「あっ!てめ…高尾!何抱きついてんだ!!」


「名前さん名前さん!!」と頭をグリグリ押し付けてくる和成くんにそれを引き剥がそうとする健介くん。
まさかこの公園に和成くんまで居るとは思わなかった。
思いもよらぬ天使の登場はとても嬉しいのだけれど、


「ああっ!邪魔しないで下さいよ!福井さん!」

「邪魔はてめぇだろうが!」


初対面にも関わらず、この二人仲が悪い。


『二人とも、仲良く、ね?』

「名前さぁぁぁん!!」

「あっ!てめぇまた!」


再び抱きついてきた和成くん。
うーん、可愛くて怒るに怒れない。というか、嬉しいし。
苦笑いしながらその頭を撫でてあげると顔をあげた和成くんが「えへへ」と嬉しそうに笑うものだから、余計引き離せなくなってしまった。
ホント、罪な子だ。

すると、その様子を見ていた健介くんが拗ねたように唇を尖らせているのに気づいたので、ちょいちょいと手招きをすると一瞬めを丸くしてから近づいてきてくれた。


『よしよし』

「っ!」


自分よりも少し高い位置にある頭を撫でてあげると、顔を真っ赤にした健介くんはうつ向いてしまった。
おお、照れてる照れてる。


「…おれ、もぅ中3なんすけど…」

『私からしたら小学生だろうと中3だろうと年下には変わらないよ』


「ね?」と未だに抱きついたままの和成くんの頭をまた撫でてあげると、ヘラりとした笑顔を返された。


「俺、大人になっても名前さんに頭撫でてもらいたいです!」

『ほら』

「…いや、そりゃ…俺だって別に嫌じゃ…むしろ、うれ、しい…です」


歯切れ悪く答える健介くん。
できればその顔をあげて照れてる顔もみして欲しい。
クスクスと笑って健介くんを見ていると「あれ?」と和成くんが少しだけ体を離した。


『なぁに?』

「名前さん、それ…指輪…ですか??」

「はぁ!?」


二人の視線の先にあるのは首にかかっている指輪だ。
それを手にとって「うん」と頷くと、健介くんはあんぐりと口を開けたまま固まり、和成くんはムスッとした顔になってしまった。どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。


「…彼氏に貰ったんですか?」

「え、や、やっぱり、名前さん彼氏いるんですか?」

『あはは、まさか。彼氏なんていないよ』


今はね、と自分の中で付け足してギュッと指輪を握ると「じゃあ」と和成くんが不思議そうにでもやっぱり不機嫌そうに首を傾げた。


「…その指輪って、いったい…」

『これはね、私のとってもとっても大切な人がくれたものなの』

「大切な人?」


顔を見合わせた二人に思わず苦笑いしてしまった。
多分二人にはよく分からないのだろう。まぁ私がそんな言い方をしているのだけれど。
納得できない表情で唇を尖らせる二人はまぁ可愛らしいのだけれど、あまり怒らせるのもよくないのでもう少し言葉を加える事にした。


『目印、かな』

「…」

『その人に私が誰かを知らせるための目印みたいなものなの』


自分でいいながら、作った笑顔が歪むのが分かる。


“もぅ会えない”


分かってるつもりだった。
前の世界で届かない所へ行ってしまった彼がいるハズがないと。
ここで出会う人達は向こうの世界の面影なんて全く持ってない人ばかり。
それでも、もしかしらこっちの世界には彼はまだいるかもしれない。
そう願ってしまうのは多分、それが私がここにいる意味だからだと思う。
会いたいと願う事しか出来ないから。

込み上げて来るものを堪えようと下唇を噛んでしまうと、「名前、さん?」ほら、和成くんが不安そうに名前を呼んでいる。ああ、情けない。


「な、泣かないで名前さんっ!ごめん、ごめんなさい!俺、その…名前さんの嫌な事しちゃった…?」

「お、俺も…すみませんでした…!だから…だから…」


「そんな顔しないで下さい…!」健介くんの声に自分が酷い顔をしているのだと思った。
泣きそうな顔で私を見つめる二人はまるで“嫌わないで”と言っているようで、ソッと目を細めて二人に手を伸ばし、両手で抱き締めてしまった。


「っ、名前…さん…」

『…ごめんね?ちょっと嫌な事思い出しただけなの。だから二人は何も悪くないよ』


金色と黒の髪を優しく撫でると、「ホントに?」とまるで子犬のような目と視線があった。年下にこん
な心配かけるなんて、ホント馬鹿だ。
本当だよ、という意味を込めて笑って頷くとクシャリと顔を歪めたあと、手持ち無沙汰だった腕を二人は背中に回してきた。


「あの…本当にすみませんでした…」

『だからね、二人は何も悪くないのただから謝らないで?むしろ心配かけた私の方が悪いよね」


抱き締めていた二人を少し離して、「ごめんね?」と言うと凄い勢いで首を振られ、「謝らないでいいっすよ!!」そうですよ!」と言ってくれる二人の勢いがスゴくて少し目を丸くしてから、今度は「ありがとう」と笑うと、ちょっとしてから二人揃って、和成くんは嬉しそうに健介くんは照れたように笑ってくれた。
やっぱりこの子達は笑顔が素敵だ。

それからまたバスケを始めた二人を見ながら、自然と手が指輪に触れた。
楽しそうにボールを追う二人の姿は微笑ましいのにちょっとだけ泣いてしまったのは、愛しい彼もバスケが好きだったからだと思う。

ねぇ、和也さん
あなたはやっぱりこの世界にもいないのかな

ギュッと指輪を強く握っていると「名前さーん!!」と和成くんが手を振ってきた。
それに手を振り返しながら作った自分の笑顔が本物だったのが、なんだか酷く苦しかった。

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