中学3年になりました2
怪我をした見知らぬ少年を手助け?して、良いことすると気持ちいいなぁ、なんて考えながら帰路についていると、ここら辺ではあまり見かけない制服を着た男の子がお婆さんと一緒になにやら話をしていた。
「本当にありがとねー」
「いえいえ、気になさらないで下さい」
爽やか、そんな言葉が似合いそうな笑顔を浮かべた少年はどうやらお婆さんを助けていたようだ。
まだどこかあどけないその表情から、多分中学1年生くらいだろう。
「それじゃあね」
会釈をしてお婆さんと別れる少年。
ああ、最近の若い子にもこういう子がいるんだなぁ。
なんて感心していると
「ちっ、道くらいちゃんと覚えろっつの」
『…え?』
いやいやいやいや、聞き間違い、見間違いに決まっている。
だってさっきの爽やか少年があんな極悪人のような顔をして舌打ちなんてするはずがない。
ゴシゴシと目を越すって再び少年を見ると、目を見開いた彼と目があってしまった。
『あ…』
「…」
無言で歩いて来る少年は、年下なのに凄い威圧感がある。
どうしたものかと、視線をウロウロさせていると、ピタリと目の前で少年が止まった。
「…おい」
『な、何かな…?』
「…見てたのか?」
『…えーっと…』
困ったように眉を下げて男の子を見つめると、男の子は「ちっ、」と再び舌打ちをしてきた。
「…忘れろ」
『え?』
「だから、忘れろ!」
『い、いいけど…あ、じゃあ名前聞いてもいい?』
ニッコリと笑って男の子に首を傾げてみせると、眉をこれでもかというほど寄せた男の子は嫌そうに目を細めたあと、三度目の舌打ち。
それから諦めたようにため息をつくと、ようやく口を開いた。
「…花宮真」
『真くんかあ…私は苗字名前です。よろしくね』
ニッコリ笑って手を差し出すと、真くんは誰が握るか、というように手を振り払ってきた。
いくらなんでも、さすがに年上に対する態度じゃない、と「こら!」と言って真くんの頬を掴むと、一瞬目を見開いた真くんはすぐに睨むように目を細めた。
「いってぇよ!!はなせ!」
『あのねぇ、年上に対する礼儀ってものがあるでしょ?
いい?目上の人にたいして失礼な態度をとっちゃダメ』
「分かった?」と言って真くんを見ると、拗ねたように唇を尖らした彼から返事はない。
それにため息をついて、手を離すと、真くんがチラリとあたしを見る視線に気づいた。
『…返事は?』
「……………………………おぅ」
『ん、よろしい』
視線を近くの電柱の方に向けて、ぶっきらぼうに返してきた真くん。
なんだ、案外可愛い所もあるじゃないか、内心笑ってしまいながら、頭を撫でると、驚いたような瞳と目があった。
『それじゃあね、真くん』
綺麗な黒髪から手を離してヒラヒラとその手をふって背を向ける。
もちろん返事はなかったけれど、最後にみた真くんの真っ赤な顔が可愛かったからよしとした。
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