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中学3年になりました3


「それで抑えててね」

走り出した背中は妙に頼りがいがあるもので、すぐに見えなくなってしまった。
そのあとすぐに保健の先生が戻ってきて、話によると、さっきの女の先輩が呼んできてくれたらしい。
先生に名前を聞いたところ苗字名前と言って2つ上だと教えてもらった。

先輩に渡された白かったはずのハンカチは真っ赤に染まってしまった。










「あの、ここって苗字先輩のクラスですか?」


あれから3日。
俺は苗字先輩にお礼を言うべく、彼女のクラスを訪れた。


「ああ、苗字?呼ぼうか?」

「お願いします」


ドアの近くにいた男の先輩に頼んだところ、人の良さそうなその人は少し大きな声で教室に向かって苗字先輩を呼んでくれた。


『なにー?』


柔らかな声が聞こえたかと思うと、中からひょっこり現れたのは、間違いなくこの間の先輩だ。


『あ、君は…』

「あの、この間はありがとうございました」


頭を下げて苗字先輩に礼を言うと、先輩の隣にいた先ほど彼女を呼んでくれた男の先輩の意地の悪い声が聞こえてきた。


「なんだよ苗字、1年をたぶらかしてんのか?」

『そんなんじゃないよ。それより、この子と話したいから中、入っててもらえる?あと、頭をあげてもらえないかな?』


先輩の声にゆっくりと頭をあげると、先ほどの男の先輩はすでにそこからいなくなっていた。


「あの、それであのハンカチなんですけど、俺の血で汚れてしまったので…。これ…」


先輩に差し出したのは小さな包み。
中には新しいハンカチが入っている、と言ってそれを渡そうとしたけれど、先輩は困ったように笑って首をふった。


『いいよいいよ、そんなの貰えるようなことしたわけじゃないし』

「いや、でも俺が持ってても仕方ないんで」


「受け取って下さい」と更に差し出しすと、先輩はまた困ったように笑ってから、「じゃあ、遠慮なく」と言って受け取ってくれた。

『ありがとね、えっと…』

「1年の虹村修造っす」

『虹村くんね、私は3年の苗字名前』


「よろしくね」と柔らかく笑った先輩がそっと手を差し出してきてくれたので、ぎこちなくそれを握ると、先輩はまた小さく微笑んだ。


『それじゃあ、そろそろ授業も始まっちゃいそうだし』

「あ、あの!…また、その…話しかけてもいいっすか…?」


きょとんとしたように俺の質問を聞いた先輩は、そのあとふふっと笑ってから大きく頷いた。


『もちろん』


それからすぐに教室へ入った先輩。

あんなに綺麗に笑う人がいるんだな、と先輩の入っていったドアを眺めていると、授業開始のベルが鳴って、慌てて教室に戻ったのだった。

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