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answer3 黒子テツヤ


薄暗い天井を見上げながら、火神大我の言葉を頭の中で繰り返す。私が、どうしたいのか。頭に浮かんで来たのは、淡い水色の彼。
シンとした空気を先に切ったのは、何かを決意した表情をした火神大我の方だった。


「…あのさ」

『うん?なに?』

「…黒子のこと、なんだけどよ…」

『っえ?』


まさか、火神大我は私の頭の中を読んだのだろうか。少しだけ裏返った声で首を傾げると、火神大我の真っ直ぐな視線が向けられた。


「黒子のこと、嫌いか?…です」

『…き、き、らいじゃない…よ』

「!!本当か!?」


パッと表情を明るくさせて、肩を掴んできた火神大我。何がそんなに嬉しいのか分からないけれど、とりあえず頷くと、火神大我が何処か安心したように肩の力を抜いた。


「…良かった…アイツ、あんたのことスゲエ大切だって言ってたから…」

『大切……』


そりゃあ、今の黒子テツヤからしてみれば、大切なのだろう。なんたって彼は私の自称彼氏なのだから。

そこで、ふと気づく。
黒子テツヤも、確かに他と同様に私の彼氏だ言ってきた。けれど、そこには明確な違いがある。それは、“ゲーム”に参加していないということ。
なぜ彼はゲームに参加していないのだろうか。
疑問に思って首を傾げると、火神大我も「?どうしたんすか?」首を傾げた。なにそれ可愛い。


『…ねえ火神くん。黒子くんと私っていつ知り合ったか知ってる?』

「?いや、詳しくは…けど、あんたと黒子は付き合ってんだろ?」

『…えーっと…黒子くんから聞いたの?』

「それもあるけど…前に、うちの学校まできて黒子に会いに来てたじゃないっすか」

『え』


ちょっと待って。なにそれ?初耳なんですけど??
目を丸くして火神大我を見ると、そんな私の反応を不思議そうにしながらも、火神大我は言葉を続けた。


「付き合ってたから、迎えに来たんだろ?です」

『…私の記憶にはないんだけど…』

「え?あー…そういや苗字さんが事故に遭う前のことか…」


「それじゃあ覚えてねえか」残念そうに眉を下げた火神大我。この子から、もう少し何か聞けないだろうか。
何か質問をぶつけようとしたとき、「火神くん」落ち着いたテノールボイスが廊下に響いた。


「ん?おお、黒子かよ」

「…君、何の話してたんですか?」

「何ってお前…前にこの人がお前のこと迎えに来てたから、その話を…」

「…そうですか…。それより、火神くん、監督が探してましたよ」

「おお、そうか。じゃあ行ってくるわ」


黒子テツヤの言葉にアッサリと火神大我はその場を離れて行った。もしかしなくても黒子テツヤと2人きりだ。何となく気まずくて、視線をウロウロさせていると、それを察したのか、「それじゃあ僕も」と踵を返した。


『あ、ま、待って!』

「っ!…どうかしましたか…?」

『え、いや…えっと……』


帰ろうとする彼の背中を見て、思わず引き止めてしまったものの、何を話せばいいのだろうか。
首を傾げる黒子テツヤに、視線を床へと落とすと、それをどう思ったのか、黒子テツヤの手が頭の上に乗せられた。


「…火神くんの言っていたことを、気にする必要はないですよ」

『え…』

「確かに貴女に、僕が今のあなたの恋人になれるか考えて欲しいと言いました。けど、それは強制ではありません。名前さんが、無理だと感じたのなら、僕は…あなたを諦めます」


安心させるように髪を撫で、優しく微笑む黒子テツヤに、何故か鼻の奥がツンとした。


「困らせてしまってすみません。それでは、僕はこれで…『待って』っ」

『…違うよ黒子くん、そうじゃ…そうじゃないんだよ…』

「名前さん…?」

『…あのときはビックリしたし、貴方のこと疑ってた。他の、“ゲーム”に参加している人たちと同じように、私のこと勝手に彼女だなんて言ってるんだと思ってた。でも…今は嘘でも良かったって思ってる』

「…それは…」

『…私、その嘘が嘘なら本当にしたいっ…黒子くんが、好きだから』


自分の声がやけに響いて聞こえる。驚いたように丸くなった水色の瞳。ああ、言ってしまった。心臓うるさいし黙っててよ。
急激に熱くなる頬を隠すように俯くと、白くて細い、でも骨張った男の子の手に頬を包まれた。


「今の、聞き間違いじゃありませんよね」

『…っ、ま、間違いじゃ、ない、です』

「…良かった」


頬を包んだ手によって上げられた顔。恐る恐る黒子テツヤを見れば、物凄く優しい目と目が合って、余計に顔が熱くなる。なにこれ。恥ずかしいんだけど。
顔を逸らそうとしたとき。


『っ!?』

「…もう、貴女は僕のものでいいですよね?」

『…は、はい…』


黒子テツヤとの最初のキスは、甘くて優しくて、この世界に来て一番の幸せを感じた。



END3

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