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answer2 宮地清志


火神大我と話した翌朝。随分と早い時間に目が覚めた。もう一度寝ようにも、目が冴えてしまって眠れない。
仕方なく起きて、身支度をすませて部屋を出ると、まだ少し薄暗い廊下を歩いて外に出る。
少し寒いかな、なんて半袖のシャツから出ている腕を摩っていると、不意に肩に重みを感じた。


「着とけ」

『…宮地くん?』


振り向くと、立っていたのは宮地清志だった。どうやら彼のジャージを掛けてくれたらしい。オレンジ色のそれを確認して「ありがとう」と笑うと、「別に」と返した宮地くんは、視線をそらした。


「随分と早起きじゃねえの」

『目が冴えちゃって』

「あんまり無闇に彷徨くな、埋めるぞ」

『…うん、ごめんね』


なんとなく気まずくて謝ると、大きな手に髪を撫でられる。

昨晩、火神大我に“どうしたいのか”と問われたとき、この世界で生きなければならない可能性を考えた。そして、もし本当にそうなったとき、私は、どうしたいのか。誰と、生きたいのか。そう思った時、真っ先に頭に過ぎったのはハニーブラウンの髪をした彼。


『…ねえ、宮地くん』

「なんだよ?」

『…宮地くん、ホントは知ってたんでしょ?赤司くんの“ゲーム”のこと』

「!おまっ…!!なんで、それを…」


目を丸くした驚いた顔の宮地清志。そんな彼の答えをジっと待っていると、気まずそうに後頭を掻いた後、宮地清志はソっと目を伏せて頷いた。


「…ああ、知ってたよ」

『…だよね。じゃなきゃ、あんなにタイミングよく助けて貰えないよね』


宮地清志は、ここでの私にとってはヒーローのようだった。高尾和成に襲われそうになったとき。桃井さつきに閉じ込められたとき。そして、私が倒れそうになったとき。宮地清志は、いつだって助けようとしてくれた。私の味方になってくれようとしてくれた。
これで、惚れないわけがない。彼は、宮地清志は、この世界で私の絶対の味方だから。


『ねえ、宮地くん』

「?なんだよ?」

『ありがとう』

「は?」


あ、ポカンとした顔。これ結構レアなのではないだろうか。間の抜けた声と表情に思わず笑ってしまうと、ハッと顔を少し赤くした宮地清志は、怪訝そうに眉根を寄せた。


「…別に、礼を言われるようなことしてねえけど…」

『ううん。宮地くんは沢山沢山助けてくれたよ』

「…それは、“ゲーム”のことを知ってたのに、お前に言わなかったから…その罪悪感からみたいなもんで…」

『じゃあ、私に好きだって、惚れ直したって言ってくれたのも罪悪感からなの?』


ジッと宮地清志の目を見ると、その瞳がほんの少し丸くなった。そんな宮地清志の右手をとっては両手で包むと、見開かれていた目がソっと細まった。


「それは、違う。あのとき言った言葉は、そんなんじゃねえ」

『…良かった。もし、そうだって言われたらどうしようかと思った』

「は?」

『だって、嬉しかったから』


宮地清志に好きだと言われたとき、降ってきたキスに驚いたし、彼も所謂病んじゃってる系なのではないかと疑って、ショックを受けた。
けど、すぐにその誤解は解けたわけなのだけれど。
それになにより。


『嫌じゃなかったよ』

「…それは、」

『宮地くんにキスされたとき、嫌じゃなかったよ』


ゆるく笑んで見せると、包んでいた右手に力が入ったのが分かった。


「…お前、そんな言い方していいのかよ?」

『なんで?』

「…勘違い、させても文句言わせねえぞ」


真剣な目に射抜かれて、心臓が大きく音をたてる。
ソっと微笑んでみせると、宮地清志の右手にまた力が入った。


『うん、いいよ。勘違いじゃないから』

「っ」


肯定の言葉を口にした瞬間、いつの間にか包んでいたはずの宮地清志の右手は消えていて、少々乱暴に腕を引かれた。腰に左腕が周り、顎を右手で捕らわれるとそのまま、迷いなく宮地清志の整った顔がくっつけられる。
目を閉じて、両腕を宮地清志の首に回すと、唇が割られ、熱い舌が入ってくる。

苦しい。でも、なんだか嬉しい。
ここの私だとか、向こうの私だとか、そんなこと関係なしに、私はただの“苗字名前”として、この人が好きなのだ。

流石に息苦しくなって、宮地清志の腕をポンポンと叩くと、名残惜しそうに唇が離された。


「…とりあえず、高尾や他の野郎に言っとくか」

『なんて?』

「次に人のモンに手え出したら、轢くって」

『あはは。けど、私が宮地くんのこと好きになっちゃった時点でゲームは終わるから、大丈夫じゃないかな?』

「いや、あいつらは執拗いから安心できねえ」


「何かあったら、絶対呼べ」と言ってくれるのは嬉しいけれど、私は神奈川で宮地清志は東京だと分かっているのだろうか。「大丈夫だよ」ともう一度笑って見たけれど、それでも不満そうな宮地清志がなんだか可愛く見えた。


「そろそろ戻るか」

『うん。そうだね』


合宿所の中に戻ろうとする彼に付いていこうとしたとき、不意に宮地清志が振り返った。
どうしたの、と顔を上げると、柔らかな唇が押し当てられて、目を丸くする。


「目移りしたら、許さねえからな」

『…っ、し、しないよ。宮地くんだってしないでよ』

「あ?誰に言ってんだよ」


額をくっ付けて2人で笑っていると、宮地清志の手が頬を包んできた。
合宿所に戻るのは、もう少し後になりそうだ。



END2

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