no answer 赤司征十郎
※時系列的にcase30のあと。case31火神大我は別になります。また、ハッピーエンドがお好みの方にはオススメできません。ご注意ください。
ああ、ムカつく。なにこれ。なんでそんなふざけた“ゲーム”なんかに巻き込まれなきゃならないんだ。眉間の皺を伸ばすこともしないで廊下を歩き、角を曲がろうとしたとき。
『いっ!…ご、ごめんなさい』
「…ああ、名前さんでしたか」
『!あ、赤司くん…!』
不運にも曲がろうとした角でぶつかったのは赤司征十郎だった。なんでこんなタイミングで。
ジッと見つめるオッドアイから避けるように顔を逸らすと、それをどう思ったのか、赤司征十郎が一歩距離を詰めてきた。それにつられて、思わず一歩下がると、トンっと背中に冷たい壁が当たった。これはヤバイ。慌てて距離を取ろうとしたけれど時既に遅し。赤司征十郎の両の手が顔の脇についた。
『っあ、あの…赤司くんっ』
「…なんですか?」
『う、腕を…退けてくれない…?』
「…退ければ、あなたは逃げてしまうでしょう?」
『な、何言って…』
焦って言い返そうとしたけれど、赤司征十郎の目は逸らさせることなくジッと私を捕らえたままだ。ああ、ダメだ。これはもうバレている。
綺麗すぎるオッドアイに臆してしまう。視線を下げて逃げると、赤司征十郎の右手が顎に添えられた。
「どうやら、余計な事を吹き込まれてしまったようですね」
『よ、けいなことって…』
「“ゲーム”について」
『っ!』
ヤバイ。今、思いっきり肩を揺らしてしまった。動揺を形に出してしまったことで、心臓の音が緊張で弾む。
震える唇を誤魔化すように噛むと、赤司征十郎の指が咎めるように唇をなぞった。
「唇が、切れてしまいますよ」
『…赤司くん、あなたは…なんで、ゲームなんて馬鹿なことを…?』
「馬鹿なこと、ですか?」
口元に浮かべられていた笑みが消える。聞き方を間違えたかもしれない。背中に嫌な汗をかいていると、赤司征十郎が再び顔に笑顔を貼り付けた。
「そうですね。確かに、馬鹿げたゲームだ」
『え…』
「正直言って、このゲームを始めたのは、ただの暇潰しのようなものです。どうせ、結果の決まった“ゲーム”に意味はありませんから」
『結果が決まってるって…なんで、そんなこと』
分かるの?そう尋ねようとすると、首に、ヒンヤリとし感覚が走り、体が強ばった。当てられているのは、赤司征十郎の右手。怖い、と本気で思うのは初めてだ。
心臓の音と一緒に荒くなる呼吸を整えようとしていると、やけに落ち着いた声が耳に届く。
「分かりますよ。なぜなら、僕が負けるわけがありませんから」
ああ、ダメだ。これはダメだ。赤司征十郎の目は本気だ。首に回された手にほんの少し力が加わる。
自分でも分かるくらい震えている身体に、内心笑ってしまう。そんな私を嘲笑うように目を細めた赤司征十郎は、首に回していた手をゆっくりと下ろした。
「名前さん、あなたは、僕のものです。他のモノになることは、絶対に、許さない」
冷たい瞳と一緒に、整った顔が近づいてくる。
逃げろ。逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ。
頭の中で警報を鳴らして、足を動かそうとしたけれど、足の間に割って入ってきた赤司征十郎の膝によって、それを遮られる。
「逃げたい、ですか?」
『っ』
「ここで、俺に捕まるか、それとも……俺から逃げて…死にますか?」
『な…』
なんだ、それは。私は、赤司征十郎から逃げれば死ななければならないというのか。
理不尽過ぎる物言いに「冗談でしょ?」笑ってやりたいのに、赤司征十郎の目が、それを許さない。
「離しませんよ、永遠に。苗字名前は、僕のものになる運命なのだから」
再び首に添えられた手。
ゆっくりと落とされた赤司征十郎の冷たい口付けを、私は、拒むことが出来なかった。
bad end?
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