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case20 赤司征十郎


赤司征十郎の登場=大ピンチ。

絶対零度の視線で自らのチームメイトを見下ろす赤司様。
とりあえず、私の腕の解放を願いたい。


「…お前たち、一体何をしているんだ?」

「征ちゃん…」

「…俺が何をしようがお前には関係ないだろう、赤司」

「…口の聞き方には気を付けた方がいい。今の“僕”は気が立っているからね」


“僕”。
今、彼、そう言いました?
固まったまま赤司征十郎を見つめていると、綺麗すぎて怖いオッドアイがゆっくりと向けられる。


「おや?顔色が悪いですね……部屋まで送りますよ」

『え"!……い、いやいや!大丈夫!ひ、一人でいけるから!』

「そうはいきません」


笑って首をふる赤司征十郎。
どうしよう、これ。死亡フラグたってない!?
とにかく断る方法を考えようと考えを巡らせてみたけれど、そんな私など露知らない赤司征十郎は「行きましょう」と手を引いて歩き始めた。
この手を振り払う勇気を誰かくれませんか。
顔の筋肉をこれでもかというほど強張らせていると、前を歩いていた赤司征十郎が急に足をとめた。


「…何かな千尋」

「ソイツ、俺が送ってってやるよ。わざわざ“主将様”がすることじゃねえだろ?」


どこか挑発するような黛千尋の言い方。
後ろから分からないけれど、赤司征十郎の雰囲気が再び凍った気がする。
チラリと実渕玲央を見ると「そうね」と冷めた声を出した実渕玲央も頷いた。


「…そうか…お前たち、どうやら少し痛い目を見た方がいいようだな」

『!?ちょ、ちょっと待った!!!』


慌てて声をあげて赤司征十郎の腕を掴むと、三人が目を見開いた。
ここで止めなきゃダメだ…!
だって今、赤司征十郎のポケットから彼愛用のハサミが見えたし。
流血沙汰は真っ平ごめんです。
覚悟を決めて大きく深呼吸をすると、「なんだ?」黛千尋が怪訝そうに眉を寄せた。


『え、あ、あー…えーっと……あ、かしくんにちょっと用事があるんだよねー…』

「…そう、なの?」

『う、うん。だから、赤司くん、部屋までの付き添いお願いしていいかな?』


ああ、私何言ってんだろ。
一番の鬼門に向かうなんてアホか。
内心涙を流しながらも、なんとか作り笑いを浮かべていると、「分かりました」赤司征十郎が満足そうに笑って、また歩きだした。
前に立っていた黛千尋の横を通るとき、悲しそうな目をした彼と一瞬目があった気がした。










『あ、ここが私の部屋だから……。ありがとうね、赤司くん』

「いいえ…ああ、そうだ。僕に用事とは?」


綺麗に笑いながら尋ねてくる赤司征十郎に、一瞬「なんのこと?」と聞き返しそうになった。


『え?あ、あー…あはは、そう、用事。あ、あのね、その…記憶を取り戻すのに情報を集めてて、その…わ、私と赤司くんて初じめて会ったのはいつかな?』


ない頭を働かせてなんとかそれっぽい質問を赤司征十郎に投げると、「…ああ、なるほど」と納得してくれたのか赤司征十郎は1つ頷いた。


「僕たちが出会ったのは、インターハイの会場でですよ」

『インターハイ……それって確か黄瀬くんが青峰くんに負けた……』

「はい、そうですよ」

『そこで赤司くんと会ったの?どうやって??』

「あなたが落とした携帯を僕が届けたんですよ」


…まあ、あり得ない話ではないか。
「そっか、ありがとう」と赤司征十郎にお礼を言うと、いいえと首をふった後彼はソッと目を細めた。
え、なにその顔。
キョトンとして赤司征十郎を見ていると、「僕からも1ついいですか?」と彼の唇が動いた。


『うん?いいけど…』

「……では名前さん、貴女はどうして、“黄瀬が青峰に負けたこと”を“覚えているんですか?」

『……え』


覚えて、いる?
何を言っているの、と笑おうとしたとき、数秒前の自分の台詞を思い出す。

“インターハイ……それって確か黄瀬くんが青峰くんに負けた……”

や……やってしまったあああああ!!
やってしまってるよ私!!何してんのおおおお!!
思わず叫びそうになるのを堪えて、なんとか誤魔化そうとするけれど、頭は真っ白になって何も出てこない。
どうしようどうしようと脳内をグルグルと回していると、赤司征十郎が愉しそうに笑った。


「何か、ありそうですね?」

『え!?い、いや!あのね!その……えっと……』

「いいですよ。言わなくて」

『……へ?』

「名前さんが何かを隠していることには、なんとなく気づいてましたし」


え?気づいてた??
ギョッと目を丸くすると、赤司征十郎が「分かりやすい所も変わりませんね」と髪を撫でてきた。


「ですが、記憶がないというのは本当でしょう。僕とのことは忘れてしまっているようですしね」


いや、まあそれも嘘なんだけど…。
でも赤司征十郎(僕司)って以外といいやつ?
もしかして話せば分かってくれる?
ゴクっと唾を飲んで「あのさ、」と思いきりよく声をあげると、赤司征十郎はまた「なんですか?」と微笑んだ。


『…私、記憶がなくなってから、よおおおおく考えたんだけど……一度、友達に戻れないかな!?』


い……言ったあああああ!!
桃井さつきの作戦を今更ながら実行したよ!
なんか一生分の勇気を使いきった気分だよ!
ドキドキとうるさい心臓の音を落ち着かせるように胸の辺りを押さえていると、赤司征十郎がフッと笑みを溢した。え、笑ってる。
もしかしていける!?


「ははっ……それは面白い冗談ですね」

『…え?…じょ、冗談…?』

「ええ。冗談でしょう?それとも……本気で言ってるとでも?」


あ、あはは、ですよねー。そうですよねー。
根拠のない自信を持っていた自分を呪いたいです。
「滅相もありません!!」ブンブン首をふると、「そらなら良かった」赤司征十郎の手が首筋を撫でた。


「…名前さんの肌は白いですね」

『そ、そうかな?』

「はい。白くて……よく、映えそうだ」


何が?
そう尋ねようとする前に、チクリとした痛みを感じた。

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