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case16 葉山小太郎&氷室辰也


合宿2日目。
昼練を終えた選手たちがストレッチをするのを横目に、さつきちゃんとリコちゃんの手伝いをしようとしたけれど、物凄い勢いで「大丈夫です!先輩は休んでて下さい!!」と片付けようとしたボール二個を奪われた。
仕方がないので先に体育館を出て、合宿所の昼食の準備を手伝おうと、廊下を歩いているとガバッ!と後ろから何かに飛びつかれた。


『!?!?な、なに!?』

「あはは!!俺だよ!おれ!」

『え?え?お、俺が…?』


俺だよ!おれ!ってオレオレ詐欺かよ。
「だから、俺!葉山小太郎だよ!」とグリグリと後ろ首に頭を擦り付けてくる彼に、頭に思い浮かんだのはオレンジの髪の八重歯が特徴的な人物。
なんだ、葉山小太郎か。
いや、なんだではないけれど。
ギューっと効果音がつきそうなほど、後ろから抱き締めてくる葉山小太郎に、痺れを切らして離してくれと言おうとしたとき。


「…何、してるのかな?」

『(このタイミングでえええええ!?)』


冷たい笑顔で登場したのは、なんと氷室辰也だった。
というかあんたら、来るの早すぎ。
ちゃんとストレッチしたんですか?
私を抱えたままクルリと振り返った葉山小太郎に、いやいや離しなさいよ、と思っているとそれを代弁するかのように氷室辰也が葉山小太郎の腕を掴んだ。


「…離して、くれないか?」

「……なんで?」

「名前さんが嫌がっているように見えるからさ」


ね?なんて首を傾げてくる氷室辰也。
できれば私に振らず助けて欲しかった!
不満そうに見てくる葉山小太郎から視線を反らすと、「嫌なの?」自棄に低い声が囁かれた。


『い、嫌というか……初対面でこういうことは困るというか……』

「…初対面?」


さっきとは売って変わった声でそう首を傾げる葉山小太郎。可愛いのに、可愛いと思えないのが残念。
コクコクと頷いて肯定を示すと、「あ、」と何かに気づいた葉山小太郎がようやく解放してくれた。


「そっか、記憶ないんだっけ」

『う…うん…。だから、その…葉山くんのことも、よく分からないんだよね』

「んー…それじゃあ仕方ないね!」


ケロリとした顔で「思い出せるように俺も手伝うよ!」と八重歯を見せて笑う葉山小太郎に、ありがとうと返すと葉山小太郎の手がゆっくりと頬を滑った。


「だから、早く思い出してよね?」

『っ、は、やま…くん?』


ジッと、逃がさないとばかりに見つめられて、思わず固まっていると、そんな私の腕を引いてくれたのは氷室辰也だった。
ハッと顔をあげて氷室辰也を見ると、まるで人一人殺せそうな勢いで葉山小太郎を睨んでいるではありませんか。
エレガントヤンキー、怖いです。


「…あまり、触らないでくれないか」

「はあ?それ、俺の台詞なんだけど」


バチバチと火花を散らす二人。
「私のために争わないで!」なんて台詞があるけれど、今ここでその台詞を吐く勇気なんて在るはずもなく、サアッと冷や汗を流していると氷室辰也がクルリと方向転換した。
もちろん、私の手を掴んだまま。


「行こう」

『え!?ちょ、え?ど、どこに!?』

「邪魔なやつらがいない所へ、だよ」


美人は怒ると怖いと言うけれど、それは本当かもしれない。
氷室辰也の目には怒りが込められている。
「どこ行くんだよ!!」と後ろから追いかけてくる葉山小太郎を振り切るためか、長い足の動きを早めた氷室辰也。
これ、このまま連れていかれたら、どうなるんだろうか。

明らかに立っている危ないフラグをへし折るべく、氷室辰也の手を振り払おうとしたけれど、残念なことに氷室辰也の力はびくともしなかった。

私、処女守られるのだろうか。

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