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case12 氷室辰也


バスに揺られること数時間。
小堀浩志の隣を勝ち取った私、エライ。

結局、あっという間に時間は過ぎて、例の合宿がついに来てしまった。
どうにか逃げようとしけれど、今朝黄瀬涼太が家まで迎えにきたものだから、逃亡は失敗。
ああ、私、ここで生きていけるだろうか。


「あ!名前さーん!」

『あ…た、高尾くん…』


バスを降りると、先ず始めに現れたのは人懐っこい笑みを浮かべた高尾和成だった。
ああ、この笑顔にも裏があるのか。
ははっと内心冷めた笑顔を溢していると、手をふって歩み寄ってくる高尾和成の後ろからスゴい勢いで誰かが走ってきた。
あ、あれは…。


「名前さん!!!」

『!!??』

「会いたかった…!ずっと、心配してたんだ…!」


今、熱い抱擁をしてくれている彼は元祖ヤンデレ(ヤンキーデレデレの方)の氷室辰也だ。
だから、どんだけ顔広いのよ、私。
反応に困って固まっていると、「ちょ!何してるんスか!」バスをおりてきた黄瀬涼太によって救出された。


「大丈夫っスか!?名前さん!!」

『あ、うん。一応…』


だから、心配するならもう少し離れて欲しい。
物凄く近い。
ホッと肩を降ろした黄瀬くんは、今度はまるで射殺さんばかりに氷室辰也を見た。


「名前さんは記憶が曖昧なんスよ?急に抱きつくとかやめて欲しいんスけど」

『(お前が言うな!!)』

「…すまない。名前さんを見たら嬉しくてね」


「ごめんよ」と申し訳なさそうに眉を下げる氷室辰也。
さすが公式イケメン。
そんな顔もカッコいいんですね。
気にしなくていいと首をふってみせると、氷室辰也の目が柔らかく細まった。


『あ、あの…?』

「ああ、すまない。そういえばまだ自己紹介もしていなかったね。陽泉高校2年、氷室辰也です」

『えっと…よ、よろしく、氷室くん』


差し出された綺麗な手。
それを恐る恐る握り返すと、思いの外優しく握られるので、それが更に不安を煽った。
氷室辰也の危険度は、なんだかいろいろ高い気がする。
アハハと作り笑いをみせてから、氷室辰也の手を離そうとすると、何故か、その手が離れてくれない。


『…ひ、氷室くん…?』

「…本当に、忘れてしまったんだね…」

『ご、ごめんね、その…お、思い出せるように頑張るから、だから、その…』


あまりに悲しそうな顔をするものだから、フォローの1つでもしようとしたけれど、如何せん語彙力が足りなかった。
つい言葉を途中で切ってしまうと、氷室辰也が小さく笑った。


「…ありがとう、名前」


それは、本当にただの純粋なお礼の言葉だった。
このイケメンめ。
ふいをつかれて目を見開いていると、ようやく右手が解放された。
「行こうか」「えっ、あ、うん」
歩き出した氷室辰也の後を追いかけたとき、物凄い熱視線を感じたのは気のせいだと思いたい。

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