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case11 海常高校


ついに、この日が来てしまった。
事故で買い直してもらったという制服に身を包んで、見上げるのは海常高校。
まさか退院がこんなにも急だなんて。
そのうえ、早速学校には行くことになるし。
はあっと盛大なため息をついていると、「名前さん!!」幻覚か、尻尾をはやした金色の犬が手をふっている。


「やっっっと!戻ってきたんスね!!」

『…あ、あはは…お、おはよう。黄瀬くん』


飛び付いてきた巨体に乾いた笑顔をこぼすと、そんなことにも気づかない黄瀬涼太がキラキラと眩しい笑顔を向けてきた。
とりあえず、離して欲しい。
されるがままにギュウギュウと抱き締められていると、「ギャッ!」という情けない声とともに体が解放された。


「何するんスか!笠松先輩!!」

「そりゃこっちの台詞だ!!」


どうやら、黄瀬涼太はいつの間にか現れた笠松幸男に蹴り飛ばされたらしい。
有難い。有難いけど、この二人が揃っていることに肝が冷えて仕方ない。
誰か他の人が来てくれないか、と思っていると「名前ー!!」森山由孝が走りよってきた。


「退院おめでとう!これも俺の愛の力のおかげだな!!」

『あはは…ソーデスネ』


この運命大好きな森山由孝も、初めは危ないのではと要注意していたけれど、何度かお見舞いにきてわかった。
森山由孝はただのアホだ。
愛だの運命だの騒いでいる森山由孝を無視して、さっさと行こうとすると、「あ、おい!名前!」笠松幸男に呼び止められた。


『?なに?』

「今日はとりあえず職員室行けよ。いきなり教室に行っても不安だろうからって監督が」

『…監督って、バスケ部の?』

「?当たり前だろ。名前だってバスケ部なんだから」


ソウデシタ。
そう言えばそんな設定でした。
誤魔化すように笑って、話をそらそうと「職員室まで案内してもらってもいいかな?」笠松幸男を見ると、どことなく嬉しそうに頷き返された。
よし、森山由孝も連れていこう。
なんとなく危ない気がするし。

というわけで、森山由孝と少し不機嫌になった笠松幸男に連れられて職員室へ行くと、漫画で見たあの監督さんがいらっしゃった。


「苗字か!もう、いいのか?」

『えっと、はい。一応お医者様にも許可を貰いました』

「そうか、それならいいが…無理は禁物だぞ?」


あれ?意外といい人だ。
漫画で読んだときはあまりいい印象を受けなかったけれど、実際話してみると分からないものだ。
ほうっと、内心感心していると、「おお、そういえば」と監督さんが笠松幸男に視線をうつした。


「洛山の白金監督から、合宿のお誘いがきた」

「は?この時期に、すか?」

「ああ、それで…是非苗字も一緒に連れてきて欲しいとのことだ」

『………え?』


いやいやいや、ちょっと待って。
何いってんのこの人。
私、まだ退院したばっかりで、記憶も戻ってないってことになってますよね?
そんな病み上がり過ぎる人間を、合宿なんかに連れて行くと?
慌てて首をふって、足手まといになるから無理だ、というと、「その心配はない」と監督さんが頷いた。
あ、これ嫌な予感。


「この合宿中、苗字は無理してマネージャーの仕事をしなくてもいい。だが…洛山だけでなく、他のキセキ獲得校も来るんだ。記憶を戻すいいきっかけになるんじゃないか?」

「…確かに、名前は他校にも知り合いが多かったしな」


ちょっと!何納得してんの森山由孝!!
まずい。ひっじょおおおおおおおにまずい。
どうやってこの場を切り抜けるか頭を巡らせていると、「けど、名前は病み上がりですよ?」まさかの助け船。
笠松幸男!ナイスです!!


「ああ、だから練習中は見てるだけで構わん」

『いや、でも、あの…』

「もう返事もしておいたそ。“もちろん苗字も連れて行きます”ってな」

『な…』


なに、やってんのこの親父いいいいいいい!!
前言撤回!全くいい人じゃないよ!!
勝手すぎますから!!
ポカーンとしたまま固まっていると、「頑張ろうな!名前!」「何かあったら言えよ」
森山由孝と笠松幸男の二人が嬉しそうに言ってきた。
その笑顔が憎いです。


こうして、私の、地獄の合宿参加が決定したのであった。

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