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8 君が、ために


名前が好きだ、
そう気づいたときには、彼女は俺なんて眼中になくて、その視線は西谷だけ見つめていた

西谷も名前が好きだったし、両想いの二人の邪魔をしようなんて思ったこともなかった、
でも、今の二人を見ていると首を突っ込まずにはいられない


「西谷、」

「…スガさん?」

練習前に着替えてるときに、西谷に声をかけると、ここ最近ずっと落ち込こんでいる顔が向けられた

「名前に、会いに行ってくれ」

「っ、」

俺の言葉に西谷は苦い顔をして、回りにいた大地達も驚いたように俺を見た

「お前が必要なんだ」

「…俺にはアイツに会う資格なんてないです」

「っ、」

俯いている西谷に頭がカッとなるのを感じた

「スガ!!」

気がついたら、大地が声をあげていた

胸ぐらを捕まれた西谷は、驚いた顔もしないで、視線を下げたままだった

「アイツにはっ、アイツにはお前が必要なんだよ!西谷!」

大声を張り上げると、西谷は少しだけ視線をあげた

「俺でも、大地でも、田中でも、…他の誰でもダメなんだよ!
お前じゃなきゃ…お前じゃなきゃ、ダメなんだよ」

グッと唇を噛み締めて西谷から視線を下げた

「俺はお前が羨ましいよ、西谷、
どんなに支えたくても、俺じゃダメなんだよ…
アイツは…名前は言ってたよ、手術を受けるのが怖いって、
お前の笑顔が、もう見れなくなるのは怖いって…」

噛んでいた唇を離して顔をあげると、今にも泣きそうに顔を歪めた西谷と目があった
ゆっくりと力を抜いて西谷を離すと、大地がそっと近づいてきた

「スガさん、俺は…俺はっ、」

「…西谷、もぅいいんじゃないのか?」

隣にいたはずの大地はいつの間にか一歩前に出ていて、柔らかい口調で口を開いた

「もぅ、自分を責めるな、苗字が倒れたのはお前のせいなんかじゃない、
誰のせいでもないんだ、だから…」

「もぅ、変な意地を張るな、」眉を下げて笑った大地に西谷は目を見開いた

「…っ、大地さん!おれ、」

「今日はミーティングだけだって、コーチが言ってたなー、スガ?」

「!あ、ああ、そうだな」

「まぁ、やむを得ない事情がある場合なら、今日はもぅ帰ってもいいんだが…」

チラリと大地が西谷を見ると、西谷はギュッと握った拳を解くと、放り投げていた荷物を掴んで部室から飛び出した

その背中を見送っていると、ポンっと大地に肩を叩かれた

「…スガ、」

「いんだよ、大地
俺はアイツらが幸せになれたらそれでさ、」

ニッと笑ってみせれば、大地も周りにいた連中もどこか安心したように笑ったのだった

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