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19 6番隊隊長のお兄様


午前中、うちのクラスの戦績はサッカーとバレーが残っていた。
そういえば沖田くんがご褒美がどうとか言っていたけれど…忘れてますように。

お昼を食べようと黒崎くんたちと教室な戻る途中、「あ、あの…」知らない男の子に呼び止められた。


『はい?』

「苗字さん、だよね?ちょっといいかな、」

『…何でしょうか』

「いや、出来れば場所を変えたいんだけど…」

『…ここじゃダメなんですか?』

「うん」


これがどういう意味なのか分からないほど、私は鈍くはない。
一緒に足を止めてくれた黒崎くんと沖田くんに「先に戻ってて」と言うと、心底嫌そうに眉を寄せた沖田くんを黒崎くんが引っ張って行った。

二人が離れたあと、移動したのは中庭。
そういえば仁王先輩に会ったのはここだったな。


「あの俺隣のクラスの佐藤って言うんだけど…苗字さんが転校してきてからずっと気になってて…それで…」


「出来れば、付き合って欲しい」そう頬を染めて言った佐藤くん。
そんな彼が重なって見えてしまった。

“俺と付き合ってくれないかな?”

自分の瞳の色がなくなるのがわかる。
やめて、もう私はあの人の事を忘れるんだ。
あんなヤツ忘れて私はまた新しく始めるのだから。

何も言わない私に痺れを切らしたのか、佐藤くんがギュッと肩を掴んできた。


「頼むよ!俺、本気だから!」

『っご、ごめんなさい…無理です』

「好きなヤツでもいるの?」

『それは…いないけど…』

「じゃあ好きじゃなくてもいい!とりあえず付き合ってみようよ!!」


「ね!?」詰め寄ってき佐藤くん。

この人はアイツじゃないと分かってる。分かってるはずなのに…怖い。


『っ…は、はなし…』

「苗字さん、頼むよ!!俺と…「離せ」なっ!」

「聞こえなかったのか?離せと言っている」


低い声に鋭い視線。
先輩、だろうか。綺麗な黒髪の男の人が私の肩を掴む佐藤くんの手を掴んでいた。
自分より背の高いそその人に睨まれたせいか、佐藤くんはゆっくりと手を下ろした。


「く、朽木先輩が、なんで…」

「消えろ」


冷めた目を向ける朽木先輩という人に悔しそうに顔を歪めた佐藤くんは、「クソッ!」と捨て台詞を吐くと、そのまま足早に去っていってしまった。

その姿が見えなくなってから朽木先輩に向き合うと、先輩もこちらを見ていた。


『あの、ありがとうございました』

「奴の愚行が目に余っただけだ。それに…妹が世話になっているらしい」

『え?』


妹さん?
少し目を丸くしたとき、そういえばと同級生の一人を思い出した。


『もしかして、朽木さん…ルキアちゃんのお兄さん、ですか?』

「ああ」


なるほどそういうことか。
「私の方こそ、ルキアちゃんにはお世話になってます」と頭を下げると朽木先輩は「いや、」と小さく返してきた。


『ルキアちゃんからよくお兄さんのお話お聞きしてます』

「…そうか…」

『仲がよろしいんですね』

「…」


あれ?何か言ってはいけない事を言ってしまっただろうか。
ふっと目を細めた朽木先輩は何も言わなくなってしまった。

少しの沈黙のあとさっきと同じように顔を上げた先輩は「いや、」と小さく呟いた。


『え?…でも、よくお話するんですよね?』

「…ルキアはよく話をしてくれるが…此方からは話しかけることはない」

『それは…あの…』

「…距離の取り方がよく分からないせいだろうな」


自嘲気味に笑う朽木先輩はなんだか寂しそうに見える。
「距離?」と思わず首を傾げてしまうと、朽木先輩は頷いてみせた。


「……ルキアとは、血が繋がっていない」

『え…』

「恐らく、そのせいだろう」


ジッと一定の所から視線を外さない朽木先輩。
その瞳の色が黒く見えるのは私の気のせいなのだろうか。


『…距離って難しいですよね』

「…」

『近いと思っていたら遠かったり、遠いと思っていたら近かったり』

「そうだな」

『私には兄弟はいないので、あまり偉そうに言える立場ではありませんが…。そうやってルキアちゃんとの関係を心配しているだけでも、いいと思います』

「なに?」


ほんの少しだけ目を見開いた先輩は私へ視線を向けてきた。


『朽木先輩もルキアちゃんの事を思ってるって事ですよね?それだけで、ルキアちゃんは嬉しいと思いますよ』

「なぜそんな事が言える?」

『そんなの簡単です。
自分の大好きな人にそういう風に思われて嫌なわけありませんから』


「違いますか?」とちょっと意地悪く言うと、先輩は更に驚いた顔をした。
ちょっと調子に乗りすぎたかな。

じっと朽木先輩をみていると、何か可笑しいのか先輩はクスリと笑みを漏らした。
その様子に今度はこっちが驚いていると、「…ああ、そうだな」と先輩は今日初めて柔らかな笑みを見せてくれた。


「…礼を言う、苗字」

『いえ、生意気言ってすみませんでした』

「いや…それともう1ついいだろうか?」

『はい、なんでしょう?』

「…ルキアに何か渡してわりたいのだが、何がいいだろうか」


少しだけ微笑みながら言う先輩になんだか私まで穏やかな気持ちになった。
「先輩から貰ったものならなんでも喜びますよ、きっと」そう返すと先輩はふっと笑ってから「…そうか」と嬉しそうに返した。

そんな朽木先輩の様子を見ながら、先輩からプレゼントを貰うルキアちゃんを想像して、思わず笑ってしまったのだった。

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