夢小説 完結 | ナノ
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18 うちはくんと畑先生


結局うちのクラスのバスケは一回戦で負けてしまった。
残念だったね、と一緒に見ていた黒崎くんと沖田くんに言おうとすると沖田くんが立ったまま寝ていたものだから、黒崎くんと目をあわせて笑ってしまった。

その後二人はサッカーに出るために軽く体を動かしに行ってしまい、二人の試合まで時間のある自分はもう少し体育館で観戦をすることにした。
外、暑いし。

この学校の球技大会では、部活動生は自分の所属している競技には出れないらしく、試合のない間は審判として駆り出されているようだ。

ボーッとしながらぼんやりと試合を見ていると、目についたのは選手ではなく審判をしている綺麗な蜂蜜髪の先輩。
暑いからか、頭にタオルを巻いているけれど、その間から見える髪色は間違いなく宮地先輩である。
バスケ部だったんだな、と目で追っていると


『(あ…)』


試合間でコートが空いているのをいいことに試合用のボールをトントンとリズムよくついたかと思うと、そこからヒュッとボールを放った。
放たれたボールは綺麗な弧を描くと、そのままパサッとゴールに吸い込まれた。


『(…綺麗だな…)』


ゴールをくぐったボールを取りに行く宮地先輩を見ていると、ゴール側にいたせいか先輩と目があった。


「…何見てんだ…轢くぞ」

『す、すみません!でも…なんだか凄く綺麗でした!』


上と下で距離があるので、いつもより少し大きな声を出す。
「…あー…」と言ってガシガシとタオルの上から頭をかいた先輩は少し頬を赤くしていた。


「…そりゃどうも…」

『ふふ』


多分照れているのであろう先輩に思わず笑ってしまうと「笑うな!焼くぞ!」と怒鳴るように言われたけれど、先輩の顔が赤いせいで全く怖くない。

小さく笑っていると、ピーと宮地先輩とは別の審判の係りの人が笛を吹いた。
「お前…あとで覚悟しとけよ…」と言い残した先輩はコートの中心であるサークルの方へ行くと、試合をする両チームのメンバーの確認を始めた。


それからしばらくは宮地先輩の審判をしている姿を見ていたのだけれど、そろそろサッカーの時間かな、と体育館を出ることにした。

狭い二階席の通路を通って、下に行くために階段を降りているとトンっと誰かと肩がぶつかった。


『あ、すみませ…あれ?』


謝ろうと後ろを振り返ったけれどそこには誰もいなかった。
気のせいだったのかな。





『黒崎くん、沖田くん』

「ん?おう、苗字」

『試合もう少し?』

「おう、」

『応援するね』


ガッツポーズを作って笑ってみせると「おう、頼む」と黒崎くんが頭をくしゃりと撫でてくれた。
すると「おっと足が滑ったー」とほぼ棒読みで言った沖田くんが黒崎くんの横顔にサッカーボールを命中させた。
「いっ!!…総悟…お前なぁ…」「ムッツリ野郎への制裁でさぁ」「誰がムッツリだ!!」という二人のやり取りを笑ってみていると、「あ、」と黒崎の拳をかわした沖田くんが何か思い付いたように声を出したあと、こちらを見た。


「名前、」

『え?なに?』

「もし優勝したらご褒美な」

『え』


ちょっと待って。
そう言おうと沖田くんに手を伸ばしたのだけれどピピーという笛の音に邪魔された。なんてタイミングな。
ふっと笑みを見せてからコートの方へ向かった沖田くんとその後ろに続く黒崎くん。
優勝して欲しいのになんだか複雑になってきた。





「おい、お前」

『え?』


うちのクラスのサッカーの試合観戦をしているとふいに後ろから話しかけられた。
聞き慣れない声に振り向くと立っていたのはサクラちゃんといのちゃんの王子様。


『…う、うちはくん?』

「…」


どうして彼が私に話しかけるんだろう?
「何かな?」と首を傾げると、彼の切れ長の目がスッと細められた。


「…」

『あ、あの…?』

「…お前、殺したいと思うほど憎んでいるヤツはいるか?」

『っ!!』


“殺したいとと思うほど憎んでいるヤツ”
その言葉にふと頭を過った一人の顔。
それを隠すようにヘラリと笑って「まさか」と返すとうちは君は更に目を細めた。


『…どうして急にそんな事を?』

「いや…知り合いと似たような“眼”をしていてな」

『…知り合い、ですか』

「ああ、知り合いだ」


ジッとうちは君を見つめていると「おいおいお前らー」とのんびりとした声がした。
ソッと視線を落として、うちは君から目をそらすとポンっと何かが頭の上に乗せられた。


「…カカシか」

「お前は何度注意すれば分かるわけ?先生をつけなさい」

『…畑、先生、』


乗せられた手の招待は畑先生だった。
面倒そうに息をはいたうちは君はチラリとこちらを見てから背を向けて歩いていった。


「悪かったね、サスケに何か言われたんじゃないの?」

『…いえ…あの…うちは君って…』

「ん?」

『…いえ、何でもありません』


「すみませんでした」と笑って見せると畑先生はジッと見つめてきたあと、ニッコリと笑顔を向けてきた。
あ、この人察してくれる先生だ。


「…何か気になることがあったら言っていいよ」

『先生とはほとんど関わりないんですよ?わたし?』

「いいのいいの、むしろ俺が担任してる生徒や部活の奴らは可愛げなくて困ってるからね」

『先生ってサクラちゃん達の担任で顧問ですよね?』


「言いつけちゃいますよ?」「それは困るな」悪戯っぽく笑うと先生も似たように返してくれた。
イイ人だなぁ、とホッとしているとピピーと行われていたサッカーの試合の終わりの合図が聞こえた。


「おっ勝ったんだね」

『あ、ホントだ…』

「それじゃ、俺はそろそろ自分のクラスを応援してくるよ」

『あ、ありがとうございました』


ヒラヒラと手を振りながら体育館の方へ向かう畑先生。
うちは君もあちらの方へ歩いて行ったから多分体育館で先生のクラスは試合があるのだろう。

先生の背中を見ていると「苗字」試合を終えた黒崎くんと沖田くんが歩いてきた。


『あ、二人ともお疲れ様』


笑って二人を迎えると何故か二人は目をあわせた。
それから「何かあったんですか?」と心配そうに首を傾げてきた沖田くん。
えっと思っていると黒崎くんも眉を下げた。


「具合悪いのか?だったら言えよ?」

「そうだぜぃ」


私はなんていい友達を持ったのだろう。
「ありがとう…」と笑うと二人もふっと笑顔を返してくれたのだった。

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