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Cinderella 2


馬車が走り出してから数十分後、急に動きがとまった。
どうやら着いたらしい。

緑間くんの手をかりて馬車を降りると、先ず目に入るのはもちろん立派なお城だった。


『す、凄い…』

「さっすが!って感じだな」


ヒューっと口笛を吹く高尾くんとそんな彼を一睨みする緑間くんの間に立って大きなお城を見上げていると、ふいに門が開かれた。


「…おう、来たな」

「え!日向さん!?」


お城の中から出てきたのはなんと日向さんだった。
「まさか日向さんが王子っすか!?」「んなわけあるか、だあほ!」「いてっ!」
日向さんに小突かれた高尾くんを見て、苦笑いをこぼすと「じゃあなんど城に?」と小突かれた所を擦りながら高尾くんが首を傾げた。


「俺はアレだ。王子の付き人みてぇなもんだよ」

『ということは、王子様は皆の中の誰かってことですか?』

「…あー…まあ、とりあえず行くぞ」


そう言ってお城の中へ入る日向さん。
どうして言葉を濁したんだろう?
とりあえずその背中についていくと、中はスゴく開けた作りになっていた。

ドレスを着飾ったたくさんの女の人たちの中に混じっていると、ふいに会話が聞こえてきた。
「王子様と一曲踊れないかしら?」「一曲でも踊れたら幸せよね」「あわよくば、見初められたりしないかしら…」「そうよね。四人の中の誰に見初められても幸せよね!」
…四人?
その会話を聞いていたのは私だけではなかったみたいで、高尾くんや緑間くんも目を丸くしていた。


「四人って…まさか…」


高尾くんがそう呟いたのとほぼ同時。
奥にある階段のうえにある大きな扉が開かれた。
一気にざわめきたつ会場の人達と一緒にそちらを見ると。


「…おいおい…ははっ、マジかよ…」

「笠松さんに氷室さん、それに火神に…赤司…」

「俺も驚いたよ。まさか四人もいるなんてな」


はあっとため息をついた日向さん。
それにつられて緑間くんも面倒そうに眉を寄せた。

王子様が四人。

これってどうするべきなんだろう。
ポカーンとしたまま、階段のうえにいる四人を見上げると、赤司くんと目があった気がした。










「…スッゲー人気」

「全くなのだよ…」


舞踏会が始まってからものの数秒で四人の王子は女の人たちに囲まれてしまった。
笠松さん、大丈夫かな。
これでは近づけないので、とりあえず料理を頂きながら遠巻きに眺めていると、トントンと後ろから肩を叩かれた。


「こんばんは、俺のお姫様…!!」

『も、森山さん??』


振り向けば、そこにはなんと森山さんがいた。
しかもその後ろには根武谷さんと劉さんもいる。


「なんで森山さんたちも?」

「俺は赤司のあれだよ。なんつったかな…まあボディーガードてきなやつだ」

「ワタシは氷室の側近ある」

「…悲しいかな…俺は笠松の…。ううっ!なぜ笠松が王子なんだ!!俺もあんな風に女の子に囲まれてたいいいいいいい!!」


「あああああああっ!」と叫び声をあげる森山さんは、両膝を床について頭を抱えている。
そんなに羨ましいんだ。
なんだか可哀想になって森山さんのサラサラな髪を撫でると、ビックリしたように私を見返してきた。


『森山さんも、王子様みたいで素敵ですよ?』

「っ…」


笑顔で言ってみたけれど、森山さんは何故か顔を赤くして固まってしまった。
あれ?もしかして気にさわったかな?
キョトンとして森山さんを見ていると、急に森山さんの切れ長な目からツッと涙が溢れた。


「苗字さあああ…ごほっ!!!」

「てめぇ、人のことほっといて何してやがる?」


立ち上がって両手を広げた森山さんは、さっきまで女の人たちに囲まれていた笠松さんに蹴り飛ばされた。
だ、大丈夫かな?
オロオロとしていると、「森山なら気にするな」と笠松さんがポンポンと頭を撫でてくれた。


「それより、その格好は…」

「シンデレラ、だね」

『!ひ、氷室さん』


「とっても綺麗だね」そう言って微笑む氷室さん。
氷室さんの方がよっぽど綺麗。
「氷室さんの方が綺麗ですね」「綺麗、か…。ははっありがとう」そう言って、氷室さんも私の髪を撫でた。
「氷室、よく抜け出せたアルな」「ちょっとだけお願いしただけだよ」「…悪い男アル」
そんな二人のやり取りを聞いていると、ふいに視線を感じた。
「あの子どこのこ?」「氷室様と笠松様の二人と親しそうね…」「少し可愛いからって何様なのかしら?」
そんな会話が聞こえたのか、氷室さんが「場所を変えよう」と手を引いてくれた。
それに従って大広間を出ると、氷室さんは1つの部屋に入っていった。


「ここならいいかな」

「…うっはー…この部屋も広ぇー…」


高尾くんの感心したような呆れたような声につい頷いてしまった。
さすがお城、という感じだろうか。
ついキョロキョロと部屋を見回していると、笠松さんはうんざりしたように顔を歪めた。


「マジで面倒だぜ…。できることなら森山と代わりてぇ…」

「なに!?代わるか!!代わるか!?笠松!!」

「いや、もう無理っすよ」


嬉しそうに笠松さんの言葉に反応した森山さん。
けど日向さんの言う通り無理かなあ。
苦笑いをしているとガチャッと後ろから扉の音がして、入ってきたのはいつも通りの赤司くんと疲れた顔をした火神くんだった。


「…タツヤ…お前、俺を見捨てやがったな…」

「見捨てたんじゃないよ。タイガも少しは女性の扱いを学ぶべきだね」


「うぐっ」と言葉を詰まらせた火神くん。
そんな二人のやり取りを見つめていると、「苗字さん」と赤司くんに名前を呼ばれる。


「…今の君は…シンデレラ、で合っているかい?」

『うん。合ってるよ』

「…そうか。それなら、決めなくちゃいけないな…」


“誰が君と結ばれるのか”


赤司くんの言葉がやけに部屋に響いた気がした。

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