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Cinderella


『(花宮さんが、好き…)』


森山さんの言葉で気づけたこの想い。
これが、好きってことなんだ。
暖かくて、嬉しくて、でもなんだか恥ずかしい。
胸に手を当てて噛み締めていると、「あったぞ!!」という声が部屋の外から聞こえてきた。
「行こう、苗字さん」森山さんに従って部屋を出ると、ちょうど赤司くんと目があった。


『見つかったんだね』

「ああ、小太郎が見つけたんだ」


赤司くんの言葉に葉山さんを見ると、どこか得意気な顔をしていた。
それに小さく笑っていると「はい、これ」と実渕さんから一冊の本を渡される。


『…開いて、いいですか?』


周りを見回してそう尋ねると、皆から頷きが返ってくる。
花宮さん、いってきます。
そう心の中で呟いて、ゆっくり本を開くと眩しい光に包まれた。










「ちょっとシンデレラ!いつまで寝ているつもり!!」

『っ、え…?』


大きな声に目を覚ますと、先ず目に入ったのは気が強そうな美人さんだった。
この人も登場人物かな?
まだ覚めない頭でそんなことを考えていると、もう一人別の美人さんが苛立ったように声をあげた。


「早く起きて掃除や洗濯をしてちょうだい。私たちは今日から3日間お城へ行ってくるから、その間もサボらないでよ!!」

『おしろ?』

「そうよ。今日から三夜続けて舞踏会が開かれるの。まあ、あんたみたいな貧相な子は行くことすらできないけどね」


まるで馬鹿にするように笑ってくる二人の美人さんたちを他所に頭を回転させる。
お城。舞踏会。
このお話は


「ちょっとシンデレラ!聞いてるの!?」

『っ!は、はい!』


怪訝そうに眉を寄せてくる美人さん。
でも、これで分かった。
ここは、やっぱりシンデレラの世界だ。
ということは、この二人は私のお姉さんということかな。
「早くして!」という言葉に従って、とりあえず洗濯や掃除をすることに。
しばらくすると、「それじゃあ私たちは行くから」とおめかしをした二人は出ていってしまった。

これからどうしよう。

本当のお話では魔法使いさんが来るはず。
でも


『魔法使いさんって、一体誰なんだろ?』

「僕ですよ」

『!!??』


ポツリと呟いた言葉に返ってきた返事。
驚いて後ろを振り向くと、「すみません、驚かせてしまいましたね」と眉を下げる黒子くんの姿が。


『く、黒子くん…?』

「はい。どうやら、僕が魔法使い役のようです」


真っ黒なローブに包まれて、一本の杖を持っているその姿は、確かに魔法使いだ。
ほうっとしながら黒子くんを見つめていると、黒子くんが小さく苦笑いを溢した。


「そんなに見つめられると、少し照れます」

『あ、す、すみません…』

「いえ。ところで…このお話はシンデレラでいいんですかね?」


黒子くんの問いかけに一つ頷くと、やはりというように黒子くんも頷いた。


「…では、僕が苗字さんに魔法をかければいいんですね」

『うん、お願いします』

「やってみます」


少し緊張した面持ちで杖を握り直した黒子くんはそのまま一振りした。
すると、パッと部屋の中が輝き始める。
すごい、綺麗。
キラキラと光る幻想的な光景に目を輝かせていると、黒子くんがホッとしたように肩をおとした。


「…成功、ですね」


その言葉に、えっと思って自分を見ると、いつの間にか青色のドレスを身に纏っていた。
凄い!本当に魔法だ!
全身を確認するようにクルリと回っていると「とても可愛らしいですよ」と黒子くんが言ってくれた。
なんだか恥ずかしい。


『ありがとう黒子くん!これでお城に行けるね!』

「いいえ、お礼を言われるようなことではありません。それと、お城に行くならカボチャの馬車も外せませんね」


そう言って笑った黒子くんは、今度は窓の方へ杖を一振り。
パッと光りが見えると「行きましょう」と黒子くんに手を引かれて外へ。


『わあっ…!!凄い!本物のカボチャの馬車!!』

「喜んでもらえて何よりです」


凄い凄いとまるで小さな子供のように騒いでいると、ガチャっとカボチャの馬車の扉が開いた。


「た、高尾くんに緑間くん?」

「うっはー!やっと人間に戻れたぜ」

「全くなのだよ…」


中から現れたのは、綺麗な格好をした高尾くんと緑間くの二人だった。
驚いて目を丸くしていると、「お!苗字ちゃんかっわいいー!」と高尾くんが頭を撫でてきた。


『どうして二人が馬車から?』

「いやー、実は俺たち目が覚めたら鳥になっててさー。もう驚いたのなんのって。とりあえず、この辺飛んでたらこの家の窓から苗字ちゃんが見えて、んで様子伺ってたら黒子が現れて?急に光ったと思ったらこうして人間になってたってわけ」


「戻れてよかったな!真ちゃん」「ふんっ」という二人のやり取りについ笑ってしまうと、3人の視線が向けられた。


『あ、す、すみません…つい…』

「いーや。やっぱさ、苗字ちゃんはさ、笑ってるのが一番可愛いな」


そう言って、高尾くんの手がドレスと一緒にセットされた髪を撫でてきた。
でもなんでだろう。高尾くんがどこか寂しそうなのは。
ちょっとだけ首を傾げて彼を見つめていると、「行こっか!」といつも通りの笑顔を向けられた。
それに従って馬車へ乗りこむ。
「いってらっしゃい」と笑ってくれる黒子くんに小さく手をふると、高尾くんが馬を走らせた。

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