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85話 お盆 に 東京


※捏造注意

春高一時予選を無事に勝ち進んだ2日後。
お盆休みということで、2日間練習が休みとなった。えー。という不満げな声を漏らす日向くんや影山くんがいたけれど、身体を休めることも大切なことだ。
去年まではうちでダラダラと過ごしていたけれど、今年のお盆は少し騒がしくなりそう。なにせ、東京に行くのだから。










『え、鉄朗いないの?』

「そう。今日まで練習試合があるんですって」


そっか。音駒は今日まで練習なのか。
2日間のお盆休み。お母さんの提案で黒尾家を訪れることになった。明後日の午後から練習が始まるので、その日の午前中には宮城に帰る予定だ。
姉妹である母と鉄朗ママが、夜に向けてご馳走を作っているのを見ながら、近くを散歩でもしようかと思っていると、「そうだ!」玉ねぎを持ったままの鉄朗ママが声をあげた。


「名前ちゃん、練習試合見に行ったら?」

『え??』

「音駒でやるって行ってたから、歩いて行けるし、鉄朗も喜ぶと思うわよ」


練習試合。確かに観たい気もするけれど、突然行ってもいいだろうか。どうしようかと悩んでいると、見兼ねた母が「いってきなさいよ」と笑う。
携帯があれば迷うことなくいけるだろうか。
「行こうかな」と小さく零すと、パッと表情を明るくさせた鉄朗ママがなぜか玉ねぎを置いてパタパタとキッチンから消える。
どうしたのだろうと母と首を傾げていると、戻ってきた鉄朗ママの手には真っ赤なジャージ。










『…来ちゃった…』


鉄朗ママから軽く説明をしてもらい音駒高校に向かえば、迷うことなく到着することができた。
合宿で来たことがあるので、体育館の場所も分かっているのだけれど、如何せん自分の格好が目立つように思えて仕方ない。

“これ着ていけば目立たないわよー!ちょっと暑いかもしれないけど!”

そう言って鉄朗ママに渡された真っ赤な音駒ジャージ。最初は断ったのだけれど、何故かゴリ押しする鉄朗ママに結局負けて、着てきてしまった。
…かっこいいとは思うけれど、逆に目立っているような気がするのは気の所為だろうか。それに、かなり暑い。
チラチラと向けられる視線から逃げるようにそそくさと体育館に向かえば、風を入れるために開けられた入口からひょっこりと中を覗いてみた。


「声出せ!声!!」

「拾え拾え!間に合うぞ!」

「ブロック一枚!!!」


熱気が籠る体育館に響く声。どうやら相手は梟谷の皆さんらしい。見慣れたメンバーがボールを追っている。このセットは21対24で梟谷優勢だ。
ほうっと息をつきながら試合を見つめていると、ウォームアップゾーンにいる灰羽くんが大きな声を上げた。


「名前さん!?」

「「「「「!?」」」」」

『あ、』


灰羽くんの声につい意識を逸らしてしまった試合中のメンバー。そのせいで、梟谷に25点目が入ってしまった。…タイミングが悪かっただろうか。
苦笑いを浮かべて「こんにちは」とお辞儀をすると、目を丸くした鉄朗がこちらへ詰め寄ってきた。


「おまっ…!何でいるんだよ!?」

『え?聞いてないの?お盆は鉄朗ママの所にお世話になるんだよ?』

「っあのババア…!わざと黙ってやがったな!」


ババアって。鉄朗ママが聞いた激怒しそうだな。
鉄朗の反応に笑いつつ、靴を脱いで猫又監督の元へ向かうと、ニコニコとした監督が「いらっしゃい」と笑ってくれた。
「あの、突然すみません…」「いやいや。よく来たよく来た」「あ、あの、これ。差し入れです」
途中買ってきたアイスを渡すと、「ありがとうな」と笑って受け取ってくれた猫又監督。それにホッとしながら梟谷の監督さんにも挨拶に行くと、そちらの監督さんも「いらっしゃい」と笑ってくれた。優しい監督さんたちで良かった。

その後、休憩に入った選手の人たちに、かおりさんと雪絵さんに手伝ってもらいながらアイスを配った。選手に全員配り終え、かおりさんたちにもアイスを選んで貰うと、丁度すべてなくなった。足りてよかったとからになった袋を片付けていると、「ほら、」と鉄朗が半分ほどになったアイスバーを差し出してきた。


『?なに?』

「あと食えよ。自分の分なかったんだろ」

『え、いいよ。差し入れに持ってきたんだし』

「いいから」

『…じゃあ、一口だけ』


渡されたアイスバーをシャリと一口貰うと、何故か鉄朗がじっと見てくるものだから、少し居心地が悪い。


『な、なに?』

「…それ、」

『え?…あ、ジャージ?勝手に借りてごめんね。鉄朗ママに渡されたんだよね。これ着ていってきなさいって』

「ふーん…」


ジッと見てくる鉄朗の視線が痛い。脱いだ方がいいだろうか。下には烏野のTシャツを着ているし。
いそいそと真っ赤なジャージを脱ごうとすると、それを見た鉄朗が「え、脱ぐの?」と不満そうな顔をした。
「脱いだ方がいいんじゃないの?」「いや、着とけよ」「でも、」「いいから」
ポンポンと頭を撫でられ、渋々脱ぐのをやめると、いつの間にかアイスを食べ終わった木兎さんが後ろに赤葦くんを連れて「苗字ちゃんおーっす!」と話しかけてきた。木兎さん、今日も元気ですね。


『こんにちは、木兎さん、赤葦くん、』

「おう!」

「こんにちは、苗字」

「苗字ちゃん、東京観光??いつまでこっちいんの??」

『明後日の午前中に帰ります』

「へえ、ホテルかどっか泊まるの?」

『?いえ、鉄朗の家ですよ?』


ピタッと皆の動きが止まった。あれ?何か変なことを言っただろうか。
首を傾げて鉄朗を見ると、面倒そうに顔を顰めていた。


「え、え?黒尾くん家??」

「アウトー!!それアウトー!!」

『あ、アウト??』

「名前ちゃん、男の子は狼なんだよ?何かされてからじゃ遅いんだよ??」


凄い勢いで熱弁してくるかおりさんと雪絵さん。
何かとはなんなのだろうか。別に喧嘩もしないのに。
「従兄弟だし、大丈夫ですよ?」と返すと、2人にため息をつかれてしまった。なんでだろう。
2人の反応に首を傾げていると、はっとした顔をした木兎さんが「じゃあさ!」と声をあげた。


「苗字ちゃん、明日1日暇なんだよな??」

『え?あ、はい。一応…』

「じゃあ案内するぜ!」

『…え?』

「だから、東京観光!連れてくぜ!!」

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