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84話 照島 の ナンパ


※捏造注意

春校一時予選最後の相手は角川学園。そこにはなんと2mの選手がいた。しかも一年生。何食べてるんだろ。
二階席から見てもわかる大きさに、少しびっくりしたけれど、こんな所で負ける烏野ではない。


「やったあい!!フジクジラいなくても勝ったあああ!!」

「フジクジラって何!?」


きゃー!と可愛らしく喜ぶ仁花ちゃんと烏養元監督の教え子さんたちを横目に、頬を緩ます。
勝った。2mに勝ったのだ。
よし。と小さなガッツポーズをすれば、それを見ていた元監督に緩く微笑まれた。少し恥ずかしい。
お辞儀をすれば、軽く手を挙げて応えた監督は、そのまま子供たちを連れて歩き出す。「私たちも皆の所に行こうか」と仁花ちゃんと下に降りれば、早速、ユニフォームのまま嬉しそうにはしゃぐ日向くんや田中たちを見つけた。


『おめでとうございます!』

「おめでとうございます!!」

「おうよ!」


うぇーい!とハイタッチを求めてくる西谷と田中。そんな2人に答えてハイタッチをすると、後から出てきた大地さんやスガさんも同じく手を出してきた。
パチンと軽く手を合わせハイタッチを交わして、先輩たちと笑いあっていると、「そろそろ着替えろー」烏養コーチの呼びかけが降ってきた。
慌てて着替えに行く皆を見送ってから自分たちも片付けをするために二階へ。応援旗を片しながら試合について潔子さんと話していると、着替え終えた皆が戻ってきた。


「これ、持つな」

『あ、ありがとう縁下』


さり気なく重いものを持って行ってくれる縁下に礼を言いつつ、自分も持てる物を持って立ち上がると、視界の端で田中と西谷が潔子さんに軽くあしらわれていた。それについ笑っていると、最後の確認をするために潔子さんが残ると言い出した。
「先に行ってて」と言ってくれる潔子さんにしたがって、仁花ちゃんやみんなと下へ。


「あ!弁当箱忘れた!!!」


そう言って、途中日向くんは来た道を引き返した。こけないといいけど。あ、そういえば。


『タオル置きっぱなしだ!』

「っえ??」

『すみません!私もタオル探してきます!』

「手伝おうか?」

『いえ、大丈夫です!』


「行ってきます!」と走り出すと、「慌てなくていいからな」と後ろから大地さんの優しい声が聞こえてきた。有難いけれど、急がないとダメだろう。皆を待たせるわけにはいかないし。
置き忘れたのは多分応援したとき。観覧場所はこっちよりも向こうの階段が早いだろうと日向くんの向かった方とは逆の階段を小走りで上っていると。


「おっと!」

『あっ…す、すみません!』


ちょうど二階に着いた所で、階段を降りようとしていた人にぶつかりそうになってしまった。慌てて謝りながら顔を合わせると、相手は耳にピアスをした少し派手な見た目をしていた。ぺこっと小さく頭を下げると、ピアスさんの目がほんの少し丸くなった。


「…今日はついてんな…」

『え?』

「いや、なんでも。それより、随分急いでんね?大丈夫?」

『あ、はい。あの、本当にすみません。怪我とかないですか?』

「…んー……怪我はないんだけど…」


怪我はないけど?え、他に何かあったのだろうか?キョトンとした顔で目の前の彼を見ていると、彼の後ろにいた人が呆れたようにため息をついた。


「メアド、教えてよ」

『…え?』

「だから、メアド!教えてくんない?」


え、メアド?メールアドレス?なんで??
ポカンとしたまま固まっていると、それを見たピアスさんはにっこりと口元に弧を描く。


「教えてくんないなら、許さないけど?」

『……はあ。まあ、私のメアドでいいなら…』

「っし!」


小さくガッツポーズをするピアスさん。本当にメアドなんかでいいのだろうか。
不思議に思いながらも、リュックから携帯を出そうとしたとき。


「なにしてる?」

「は?」

『え』


鞄から取り出した携帯が、あっさりと後ろから伸びてきた手に奪われた。もちろんピアスさんではない。
ゆっくりと振り向けば、あまり感情の読めない目をした若利さんが。え、なんでここに??


「は…?え、ちょ、牛若!?!?」

『な、なんで若利さんがここに…?』

「近くを走っていた。烏野の試合を見に来たつもりだったが終わっていた」


は、走りに来たって…ここ、白鳥沢から結構距離あるよね?相変わらずな若利さんに苦笑いを零すと、目を丸くしていたピアスさんがハッとしたように人差し指で若利さんを指した。


「彼氏いんのかよ!しかも牛若!」

『え!ち、違います!!』

「あれ、違うの?」


なんて勘違いだ。若利さんに失礼すぎる。
慌てて誤解を解くと不思議そうに首を傾げられた。それにこくこく頷いて違いますアピールをしていると、黙っていた若利さんに腕を掴まれた。あれ?何か、怒ってる…?


「行くぞ、名前」

『え、あ、あの…』


ぐいっと強い力でひっぱられて、そのままピアスさんから離れる若利さん。どうしたのだろうと後ろ姿を見つめていると、ある程度歩いた所で足を止められた。


「…烏野の他の選手はどうした?」

『え?…あ、えっと…下で待ってると思います。私、タオル忘れちゃって…』

「タオル?これのことか?」

『えっ!こ、これです!』


「ありがとうございます!」とお礼を言いながら受け取ると気にするなと言うように若利さんが小さく微笑んだ。あ、この顔、久しぶりに見た。
随分長い間会っていなかったけれど、相変わらず元気そうだ。良かった。ホッと胸を撫で下ろしたとき、体育館の舞台側にある時計に目がいった。そうだ、みんなを待たせてるんだった。


『…あの、私はそろそろ…』

「名前、」

『?はい?』

「…春高に行けなくても、烏野に行ったことを、後悔しないか?」


お辞儀を1つしてその場を離れようとしたところ、若利さんに呼び止められて足が止まる。振り向いたのとほぼ同時に投げかけられた問に、中学の時、彼が白鳥沢に誘ってくれたのを思い出した。

“うちなら、お前を必ず春高に連れて行ってやれる”

ああ、やっぱり若利さんは変わらない。


『…後悔なんて、しませんよ。春高に行くのは、うちですから』


「だから、負けません」そう言って、わざと笑って見せると、ほんの少し目を丸くした若利さんが、どことなく嬉しそうに「そうか」と返してきた。

それから、若利さんと別れて皆の元へ行くと、潔子さんと日向くんも戻ってきていた。皆着いていたらしい。歩き出した大地さんの隣で、「全国、行きましょうね」と笑えば、「おう!」と破顔して笑った大地さんに髪をかき撫ぜられたのだった。

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