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65話 東京 へ 再び


フアアッとつい大きな欠伸を溢すとそれを見られていたのかスガさんと大地さんに笑われてしまった。
もう少し周りを気にするべきだった。

現在夜の12時。
2度目の東京合宿へいくために学校に集合中。
「やべー!やべー!夜中に出発するってドキドキする!!」と目を輝かせている日向くんを見て小さく笑っていると、今回の運転手をしてくれる滝ノ上さんがやってきて、さっそくバスに乗り込むことに。

「谷地さん一緒にすわろー!」「うぃ、うぃっす」
どうやら仁花ちゃんは日向くんと座るようなので、潔子さんの隣に腰かけると再び眠気に襲われて小さな欠伸を溢す。


「ふふ、眠そうだね」

『すみません…』

「謝ることじゃないよ。寝ていいからね」

『はい…』


隣から響く優しい声とバスの揺れが相まって、眠気は最高値へと達してきた。
もうだめ、寝よう。
うっすらと見えていた視界を完全にシャットアウトしたとき、潔子さんの「おやすみ」という柔らかい声が聞こえた気がした。











『…う、ん……』

「名前、おはよう。着いたよ」

『…え?』


あれからどれくらいたったのかな。
ぼんやりとした頭で瞼を上げるとまず視界には綺麗な微笑みを浮かべている潔子さんが。
うわあ、今日も変わらずお美しい。
「大丈夫?」と困ったように潔子さんが笑いかけてきてくれた所でようやくハッとして、慌てて「お、おはようございます!」潔子さんに頭を下げると、笑われてしまった。

「あっ!アレってもしかして東京タワー!?「エ"ッ…あれは…あれはー……普通の鉄塔…だね…」
バスから降りると音駒の皆さんが迎えに来てくれていた。
日向くんと研磨くんの会話に聞き覚えがあるのは私だけではないだろう。
まだ完全に覚めてくれない目を擦っていると、「よっ、寝坊助」と鉄朗の手が頭の上に乗せられた。


『寝坊助は余計』

「んな眠そうな顔で言われてもなあ」

『もう眠くないよ』


ちょっとムキになって鉄朗を見ると、愉しそうに笑った鉄朗がポンポンと数回頭を撫でてきた。
なんで撫でるの。
それに少し首を傾げていると「名前さん!!」いつの間にか灰羽くんが現れた。


『あ、こんにちは灰羽くん』

「ちわっす!!」


大きな体を曲げて頭を下げてくれる灰羽くん。
いい子だなあ。
ふふっと笑ってそんな彼を見ていると、隣にいた鉄朗に腕を掴まれた。


「ほれ、さっさ行くぞ」

『え?あ、うん』

「あ!ちょっと黒尾さん!俺のこと置いて行かないで下さいよ!」


鉄朗に腕を引かれて歩きだすと、その後ろを慌てたように灰羽くんがついてきた。

今回の遠征もいろいろありそうだ。

見えてきた森然高校の体育館。
心臓の音が早くなったのは期待か、それとも不安か。

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