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62話 みんな に 披露


合宿から帰ってきてから初めての練習日。
影山くんと日向くんの顔には、何故か絆創膏が貼られていた。
なんでも、東京合宿から帰ってきたあの日、二人は喧嘩をしたらしい。しかも、かなり派手な。


「乱闘止めるなんて初めてで、つい俺も殴っちまったよ!」

『ついって……でも、心配なさそうだね、二人とも』


しばらくBチームに入るように指示され、スガさんと話している日向くんを見ながらそう呟くと田中が不思議そうに「そうか?」と首を傾げた。


『さっき田中に謝りに来たときに見たけど…二人ともスッキリした顔してた』


「だから、大丈夫だよ」と笑うと「だな」と田中も嬉しそうに歯を見せて笑った。











『どう?痛くない?』

「おー…むしろ気持ちいいくらいだ」


練習も自主練も終えた皆がストレッチをしている中で田中を捕まえてマッサージをすることにした。
うつぶせに寝てもらって肩の辺りをほぐしていると、そんな私たちを見ていた日向くんが「おおー!」と感嘆の声をあげた。


「苗字先輩スゲエー!!」

『今度日向くんにもしてあげるね。気づいてないだけで体に疲れは溜まってるからね』

「ええ!?お、お、俺はいいです!!大丈夫です!!」

『遠慮しないで。ちゃんとした先生に教えてもらったから大丈夫だよ』


「任せて!」と笑ってみせたけれど、日向くんは真っ赤になって固まってしまった。
なんで?
それから少しして「はい、終わり!」と田中の背中を叩くと、田中はゆっくりと体を起こして肩を回し始めた。


「おおー!軽い!軽い!!」

『岡埜先生直伝のマッサージなんだから当然よ!!』

「その岡埜先生って、確か烏養コーチの知り合いだったよな?」

『正確には、烏養元監督のご友人みたいです。なかなか有名な先生みたいで、他のバレー部の人も岡埜先生のマッサージのために来たりしてましたし』


二口くんに及川さんと岩泉さんも来てくれたし、と3人の顔を思い浮かべていると「スゲエな!」とノヤが声をあげた。


『でしょ?岡埜先生って凄いでしょ!』

「いや、そっちじゃなくて、名前だよ」

『え?私?』

「俺らのために、そんな風にマッサージまで覚えられるなんてスゲエよ」

『マネージャーなんだし当たり前でしょ?』

「当たり前じゃねえよ。自分のためじゃない、他の奴のためにそこまでできるってスゲエんだって」


至極当たり前のことを言っているようにノヤが褒めてくるものだから、顔に熱が集まってきた。
「どした?顔赤えぞ?」なんて言いながら今度は顔を近づけてくるものだから更に赤くなる。


『…ノヤってホント天然…』

「は?そりゃお前だろ?」

「「「(どっちもだよ…)」」」


私とノヤのやり取りを見ながら呆れたように皆が見てくるのはなんでだろう。
ノヤと目を合わせて二人で首を傾げていると、「そろそろ帰れよー」とコーチの声が体育館に響いた。
それにいつもより少し疎らな返事を返して、体育館を出ようと立ち上がる。

出ていく皆の背中を見ながら、ここに月島くんがいないことがなんだなスゴく寂しかった。

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