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60話 最強コンビ の 亀裂


「おれ、目え瞑んの、やめる」


その一言が、歯車を変えた。









「ありがとうございました!」

「したー!」


東京合宿2日目。
合宿は無事終了したのだけれど、問題が1つ。
日向くんの一言から生まれたそれは、今の烏野に現実を突きつけた。


今のままじゃダメ。


わかっていたつもりだった。
それでも、日向くんのおかげでそれをリアルに感じることができた。
午後は一言も会話を交わさない最強コンビを見つめていると、「大変だなぁ」と鉄朗が肩を叩く。 


『他人事みたいに…』

「他人事だしな」

『…でも、大丈夫だよ、きっと。あの二人なら、ちゃんと乗り越えられると思う』


だって、“最強”の二人だし。
ニッと笑って鉄朗を見ると、「楽しみにしとくわ」と頭をグシャグシャに撫でられた。

それから、バスに乗り込むと行きと同様に仁花ちゃんには潔子さんと座ってもらった。
影山くんと日向くんが一緒に座りそうにないので、私が日向くんの隣に腰かけると、珍しく日向くんが少し怒ったような顔をしていた。


『…ねぇ、日向くん』

「え、あ、は、はいっ!」

『どうして、目を瞑るのやめようって思ったの?』


今でも十分に凄いのに。
そんなことを思って隣の彼を見つめると、小さな口がキュッと結ばれた。


「頂で、戦える力が欲しいんです」

『今でも十分戦えてると思うよ?』

「でも、ブロックにつかまれば…ボール、落ちるから」

『…それは…』

「ブロックに捕まらないように…捕まってもどうにかできるように、なりたいんです。最後の一瞬まで、戦えるように」


日向くんの真っ直ぐな言葉と視線に、一瞬ゾクリと息を飲んだ。

日向くんは、凄い。

できるかできないかで考えてない。
“できる”と信じている。
それは自分だけじゃない、影山くんのこともだ。
やっぱり“最強”コンビだな、と思わず笑うと、日向くんが首を傾げた。


「?あの?」

『…私は、日向くんのこと応援するね』

「!」

『見てみたいしね。それに…できるよ、きっと』


ねっ、と笑ってみせると日向くんも嬉しそうに笑って頷いた。


変わるなら今しかない。
上手くいく保障なんてないけれど、変わろうとしなければ変わらない。

チラリと斜め前に座る影山くんを盗み見る。
影山くんだって気づいてる。
変わらなきゃいけなことに。

ソッと目を閉じると浮かんだのは日向くんと影山くんの二人の姿。
最強コンビの復活は、きっとそう遠くはないだろう。

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