51話 谷地 と 会う
「あの、ちょっといいかな!」
『「「!?」」』
練習前、各々でストレッチをしたりしていると、制服姿の潔子さんが現れた。
いつもより大きな声で皆に呼び掛ける彼女に珍しいと思いながら、そちらを向けばその後ろからゆっくりと小さな影が現れた。
あ、もしかして。
「新しい人見つかったんスね!!」
そう、潔子さんは一年生マネージャーを勧誘すると言っていたのだ。
「私も手伝います!」と言ったのだけれど、「名前はマッサージの勉強するんでしょ?」とんわりとおお断りされてしまった。
でも、見つかって良かった!
「えっと新しいマネージャーとして仮入部の…」
「!!やっ、谷地仁花です!!!」
「おおーっ!?」「マジかスゲー!!」と皆が仁花ちゃんを囲むと、旭さんに話しかけられた仁花ちゃんが怖がったりしていた。
それに笑ってしまっていると、仁花ちゃんと目があった。
『こんにちは、』
「はぅわ!!??(ま、またしても美少女様が!!)こ、こここここここんにちは!!」
物凄く吃りながら挨拶を返してくる仁花ちゃん。
怖がられてしまったかな?
仁花ちゃんにもう一度話しかけようとすると、仁花ちゃんが物凄く怯えたようにスガさんを見ていた。
正確には、スガさんの後ろに立っている田中とノヤをだ。
あの二人、案外人見知りだな。
「良かったなあ!これで来年もマネージャー二人居るなぁ!」
「ハイ!!!」
「あぅ、おぅ…」
「ま、まだ仮だから…!」
仁花ちゃんの言葉を代弁するように焦った様子で言う潔子さん。
そのあと、仁花ちゃんは委員会の仕事があるということで、今日は帰ってしまうらしく、皆が「シアース!!」と取り囲んで挨拶をすると、また怯えてしまっていた。
なんか、小動物みたいで可愛い。
『潔子さん、』
「名前、」
その後、大地さんといる潔子さんに話しかけると潔子さんが柔らかい笑みを見せてくれた。
その笑顔がとっても眩しい。
『あの…新しいマネージャー探し潔子さんばかりに押し付けてすみませんでした…』
「大丈夫、名前は他にすることがあるんだから」
「気にしないで」と言って頭を撫でてくれる潔子さん。やっぱり私は潔子さんが大好きだ。
えへへ、と笑っているといつの間にか大地さんだけでなく、スガさんと旭さんも近くに立っていて私たちを微笑ましそうに見ていたのだった。
その翌日、練習に仁花ちゃんがやってきた。
潔子さんと何かを話したあと、キョロキョロとしだした彼女に「どうしたの?」と話しかけると、驚いたのか肩を跳ねさせていた。
「い、いいいいえ!!あ、あのっ流れ弾がですね!」
『?ああ、もしかして流れ球のことか。たまーにあるから気を付けた方がいいね』
「!!??は、はい!!もちろんです!!絶対気をつけます!!」
なんだか必死な様子で頷く仁花ちゃん。
面白い子だなぁ。
思わず笑ってしまうと、キョトンとした様子の仁花ちゃんが私を見ていた。
『あ、ご、ごめんね。笑ったりして!』
「い、いえ…あの…先輩のお名前は…?」
『あ、私は、苗字名前です。よろしくね』
「こ、こちらこそよろしくお願いします!」
頭を下げると、下げ返してくれる仁花ちゃん。
それからお互い目を合わせて笑うと、「練習始めるぞー!」と大地さんの声がした。
ちょっとは仲良くなれたかな。
それから、その日の練習で、途中仁花ちゃんに本当に流れ球が当たりそうになったりもしたけれど、日向くんのナイス働きによって当たることはなく、無事に練習を終えられた。
潔子さんは仁花ちゃんを送ると行っていたけれど、残念なことに、私は岡先生の所に行かなくてはいけなかったので、潔子さんに挨拶をして先に帰ったのだった。
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