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46話 3年 の 決意


※視点変更有り
主人公→澤村→主人公


6月3日
IH宮城県予選3日目


「大地さんは春高に行くって言った」


昼休み、田中の席の回りにはバレー部の二年生部員が集まっていた。
もちろん私も加わっている。
「俺達でもう一回行くって言った」「春高…1次予選は8月だっけか…」「敗戦に浸ってる余裕無えよ」
皆のやり取りを聞きながら少しだけ胸を撫で下ろした。良かった、もう皆前を向いている。

ホッとしながら、もう一つの心配…3年生の事を考えたとき、田中がさっき言った言葉を思い出す。
きっと、残ってくれる。









「俺は、ここで退いた方がいいと…思ってる」

「え」


昼休み、今後の事を話し合おうとうちのクラスのベランダへ出てそう言うと、スガと旭は目を丸くした。

俺だってまだ残りたい気持ちがある。
けど、今の2年は力があるのだから早く譲ってあいつら主体にチームを作った方がいいのではないか。

そんな気持ちを二人に伝えると、スガの言葉が胸に刺さった。


「大地、それって本音?」

「!」

「確かに大地は主将ていう重い立場だけど、自分を完全に殺す必要無いんじゃねえの?」


スガの言葉に心臓が大きく鳴った。
“主将だから”確かに俺はそんな風に考えてしまっていたのかもしれない。
けど、主将とかそんなの本当は関係ないのだ。
ようは“俺自身”がどうしたいか。

そんなの、決まってる。


「…俺は…」

「…」

「俺は、まだやりてえよ!!
お前らと、まだ、バレーしてえ」


なんだかスッと肩が軽くなった気がした。

ニッと笑顔を向けてくる二人に笑顔を返すと「あ、それから」とスガが何かを思い出したような顔をした。


「もう一ついいか、大地」

「?なんだよ?」

「……俺はさ、これから先も影山に遠慮なんてしない。だから…大地も俺に遠慮なんてすんなよ」

「!」


俺がスガに遠慮している事。
そう考えたとき、頭に浮かんだのは2年マネの姿。

視線を下げる俺とスガにそれを困惑した表情で見つめる旭。
そんな中、先に口を開いたのはスガだった。


「…本当はさ、もう少し前からなんとなく気づいてたんだ。けど俺、大地の優しさに甘えたんだ」


「ズルいよな」と自嘲気味に笑ったスガに下げていた視線をあげると、今度は真剣な目が俺を写した。


「けど、もう決めたんだ。バレーの事だろうとアイツの…名前の事だろうと俺、誰にも負けるつもりはないから」

「スガ…」

「けどもしかしたら俺の思い違いかもしれない。だから、改めて聞こうと思ったんだ…。
…あのさ、大地。大地は…」


“名前をどう思ってる?”


スガの言葉が頭に響いた。

最初は本当にスガを応援していた。
早くくっつけばいい、そう思っていたのに、

“大地さん!”

アイツが笑う度に胸が締め付けられるようになったて、いつからか、スガを素直に応援できなくなってしまった。
けど、それには気づかないフリをするつもりだった。
けれど、ここまで言わせてしまって、これ以上自分に、そしてスガに偽るつもりはない。


「…好きだよ」

「「!」」

「俺は…苗字が好きだ」

「…そっか…」


「負けないからな」そう笑ったスガ。
やっぱりスガは凄いヤツだと思う。
「俺だって」そう返して歯を見せて笑うと、旭がホッとしたように肩を落とした。










放課後、練習の準備を終えてからチラリと時計を確認するともういつもなら先輩達は来ている時間だ。

嫌な音をたてる心臓。
眉を寄せて視線を下げたときだった。


「やばいやばい早く!」

『!!』


ガタタと音をたてて開いた体育館の扉。
入ってきたのはもちろん待っていた人達。


「行くぞ 春高」

「!!!」


「おっしゃあああ!!」と叫び声が響くなか、潔子さんに近寄るとニッコリとした素敵な笑顔を向けられた。


『頑張りましょうね!潔子さん!!』

「うん!…けど、名前はこれからまた大変だね」

『?はい?』

「ふふ、どうなるか楽しみにしてる」


イタズラっぽく笑う潔子さんに首を傾げていると、再び体育館の扉が開かれた。


「「「こんにちは!!!!」」

「!おう」


入ってきたのはコーチで3年生の顔を見ると、やっぱり嬉しそうな顔をしていた。

それからすぐにこれからの事についてのミーティングが開かれた。
優勝は白鳥沢で、青城は準優勝だったらしい。
そのあと、コーチの話の後に大地さんが気合いを入れるために一言言うことに。


「…………昔、烏野が一度だけ行った舞台だ。
もう一度、あそこへ行く。東京、オレンジコートだ」

「うおっしゃあああ!!!」


大地さんの言葉に田中が声を張り上げた。
春高へ行くために私も出来ることをしよう。
心の中で意気込んでいると、本日三度目となる扉を開く音がした。


『た、武ちゃん!?』

「い…行きますよね!?」


「!?どこに!?」「鼻血出てます!」という一年生コンビの言葉に武ちゃんはズレた眼鏡をそのままに声をあげた。


「東京!!」


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