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33話 二口 が 失礼


『おはよーございまーす!』


インターハイ当日、学校に集合するともう皆揃っていた。


「よし、揃ったな…いくぞ!」

「「「はい!!」」」


コーチの声でバスに乗り込んで行く皆に続いて自分もバスに乗った。もちろん隣は愛しの潔子さん。


「眠れた?」

『はい、結構ぐっすり』

「ならいい」


多分緊張して眠れなかったんじゃないかと心配してくれる潔子さん。ああ、やっぱり優しい。

それから他愛のない話で盛り上がっていると、いつ間にか会場入りしていた。


「行くぞ」


た大地さんの言葉に大きく頷いて体育館に進むと、ちょうど駐車場を出たところで違和感。


『あ、すみません潔子さん、ちょっとバスに戻ります』

「どうしたの?」

『携帯忘れちゃって…』


「武ちゃん!」と先生を呼んで鍵をかり、来た道を走って引き返す。我ながらなんて凡ミスだ。


『あったあった』


バスに戻って自分の席を見ると、案の定携帯があって、それほポケットに突っ込んでバスを降りて、走って皆に追い付こうとすると、体育館に入ってすぐの掲示板の所に黒い集団を見つけた。
ホッとしてスピードを緩めて近づくと、何やら雰囲気がよくない。あれ?と思って皆が見ている方を見ると、見えたのは長身で強面の子が旭さんに向かって指を指している姿。


『…え、どういうこと?』

「ん?ああ、苗字か」


「ちょっとな」と言って、また視線を目の前の眉なしくんに向けた大地さん。それに倣って自分もそっちを見ると、眉なしさんと同じジャージを来た人が現れた。


「ちょい、ちょいちょい!…やめなさいっ」


眉なしさんに比べて小柄なその人は「すみません!すみません!」と慌てて謝ってきて、眉なしさんの腕を下げようとしている。
悪い人たちではないのかも、と苦笑いしていると「おい二口手伝えっ」と小柄な人が言うと不満そうな声をあげて茶髪の、これまたなかなか大きな人が現れた。


「すみませーん。コイツ、エースとわかると“ロックオン”する癖があって…」


ぐいぐいと小柄な人と一緒に眉なしさんの背中を押す茶髪くんはニッコリとした笑顔を見せたあと、「だから―」と今度はニヤリとした。


「今回も、覚悟しといて下s…」

『?』


「下さいね」そんな失礼な言葉がくるだろうと思っていると、それは途中で止まってしまった。
しかも、茶髪の人は私を見ている。
すると、「あ!」と何かを思い出したようにその人は声をあげた。


「きみ、やっぱり烏野のマネージャーだったんだね」

『え?』

「いやぁ、3月の試合のときに二階席にいる君のこと見つけたんだよね」


「マネージャーだと思ってたんだけど、やっぱりなー!」と何が嬉しいのか分からないけれど、嬉しそうに笑う茶髪さんに「…はあ、」と曖昧に返事をすると、ニコニコとしていた顔が一変して意地の悪い笑顔になった。


「なんかさ、すげぇ印象に残ったんだよね。もう負けるって決まってるような試合の後半も後半で、メチャクチャ声張り上げて応援してる子がいたからさ」


ピクリと眉を寄せたのは多分私だけではないと思う。「…それはどうも」と皮肉を込めて返すと茶髪さんは更に口の端をあげた。


「…今日もまた、あのときみたいに負けるのに応援するなんて、可哀想だね」


プツン、そこで何かがキレた音がした。
「てめぇ!!」と今にも掴みかかりそうな田中を止める大地さんの横を通り抜けて茶髪さんの前に立つと、不思議そうな視線を向けられた。


「なに?」

『…ご心配には及びませんよ、烏野は負ける予定はありません。それと、』

「…それと?」


笑顔の消えた顔で聞き返してきた茶髪さんに今度は私が笑顔を向けた。ぎょっと見開かれた瞳と目があった瞬間、手を伸ばして相手の胸元を掴むと、思いっきり自分の方へ引っ張った。


『…私は、例え負けた試合でも、応援した自分を可哀想だと思わないし、負けた選手たちにももちろんそんなこと思わない。そんな失礼なこと考えてバレーしてるなら、許さないっ!』

「っ、」


言いたいこと言ってパッと手を離すと、未だに驚いた顔を茶髪さんはしていた。
そんな彼の前にさっきの小柄な人があらわれて「すみません!ほんっっとうにすみません!!」と何度も頭を下げてきた。
それに大地さんが対応している間、眉なしさんが茶髪さんを引っ張ってその場から離れていった。

去り際に茶髪さんと目があったけれど、すぐに反らしたのは間違ってないと思う。

そのあと、大地さんからこってりとお説教を頂いてから二階の応援席にあがったのでした。

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